文在寅(ムン・ジェイン)政権発足以降、法務部検察過去史委員会が18年4月、浮浪者収容が不法監禁に当たるとして、検察に事件の再調査を勧告。当時の文武一(ムン・ムイル)検察総長が非常上告を決めた。しかし、大法院は今回の決定で、「事件は刑事訴訟法が非常上告の事由として定める『その事件の審判が法令に違反した場合』には該当しない」と棄却理由を説明した。検察総長が非常上告の理由として指摘したのは内務部訓令410号の違憲性だったが、判決に適用されたのは「法令による行為は処罰しない」と定めた刑法20条だったため、法令違反ではないという趣旨だ。
ただ、大法院は事件について、「単純に身体の自由を侵害したレベルではなく、人間の尊厳性を侵害した事件だ」と判断し、「被害者や遺族に対する被害回復は当然保障されるべき権利を取り戻させるものであり、今後さらに具体化された被害回復措置が取られることを望む」とし、損害賠償と名誉回復の道を残した。
大法院による棄却決定について、被害者と当時捜査に当たった検事は憤りを見せた。被害者とその家族30人余りは棄却決定後、大法院前で涙を流した。被害者Kさんは「大法院の判決はあまりに悔しく憤りを感じる。暴力と監禁を受けたことに加え、41年間も薬を飲みながら生活しているのに、政府は何の措置も講じない」と話した。
1987年に事件の主任検事を務めた金竜元(キム・ヨンウォン)弁護士は本紙の電話取材に対し、「大法院の集団無欠主義のせいで、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権の法律的裏付け役だった大法官が無罪を宣告した。大法院は今回もそれを維持した」と述べた。
兄弟福祉院事件は現在、昨年5月に近現代史における主要人権侵害事件を再調査する過去史法改正案が成立したことを受け、真実と和解のための過去史整理委員会2期が再調査を行っている。しかし、補償・賠償条項は財政負担を理由に盛り込まれなかった。釜山市が別途、東区草梁洞に「兄弟福祉院事件被害者総合支援センター」を設置し、被害の届け出受理、就職支援などの業務を行っている。