キム元所長は「北朝鮮の曖昧な言葉遣いも問題だ」として米朝の交渉担当者が欧州で会ったときのエピソードも公開した。北朝鮮側は「住民の生計を支援する措置を取れ」と何度も要求してきたが、当時欧州にいた米国の交渉担当者はそれが何を意味するのか分からず、キム元所長に電話で尋ねてきたという。キム元所長は「開城工業団地や金剛山観光の再開を意味すると説明した」とした上で「後から考えると、(北朝鮮は)まさにその話をしていたようだ」と述べた。
さらにキム元所長はシンガポール首脳会談が両国の情報チャンネルを通じて実現に至った「情報当局によるプロジェクト」だったことも明らかにした。キム元所長は「彼ら(北朝鮮)はわれわれ(米国)に非常に静かに接近することを望み、何が起こっているか周囲に知られないようにしたがっていた」「そのようなチャンネルを形成する際、彼ら(北朝鮮)は保安機関に頼る傾向がある」と説明した。
キム元所長は「首脳外交には長所と短所がある」との考えも示した。彼は「大統領や国務長官といった最も重要な(情報当局の)顧客が金正恩氏に直接会うようになったことで、金正恩氏、金与正(キム・ヨジョン)氏、金英哲(キム・ヨンチョル)氏などあらゆるミステリアスな人物に対する彼らなりの見解が形成され始めた」と説明し「これが首脳外交の短所だ」と指摘した。その上で「彼ら(大統領など)は突然金正恩氏の専門家になった」と述べた。