韓国大統領選対策委の発足式に登場したサービング・ロボット、実は中国製だった

最近韓国でよく見掛けるサービング・ロボット、70%は中国製

韓国大統領選対策委の発足式に登場したサービング・ロボット、実は中国製だった

 11月2日、ソウル市松坡区のオリンピック競技場のKSPOドームで開かれた「共に民主党」第20代大統領選挙・選挙対策委員会の発足式に、あるロボットが登場した。李在明(イ・ジェミョン)候補が予備選挙の競争相手だった李洛淵(イ・ナクヨン)元代表、丁世均(チョン・セギュン)元首相、秋美愛(チュ・ミエ)元法務部(日本の省庁に当たる)長官に青いジャンパーを着せるパフォーマンスを見せる際に、サービング・ロボットが登場し、彼らの着用するジャンパーを一人一人手渡したのだ。ロボットは、ジャンパーを着用する人物の前に行っては立ち止まるという動作を繰り返した。全員がジャンパーを着用すると、静かに舞台裏へと姿を消した。これといった操作の必要性もなく、全ては自律走行で行われた。

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 有権者に未来志向的なメッセージを伝えようとする演出だったが、イベント会場に駆け付けたロボット業界の関係者らは、複雑な心境を隠せなかった。舞台上のロボットが中国製だったからだ。中国深セン市のロボットメーカー「プドゥテック」が開発し、韓国の「VDカンパニー」が韓国国内の流通を受け持っているサービング・ロボット「ベラボット」だった。中国製ロボットの使用について、「共に民主党」の関係者は「イベントの企画会社が担当した」と回答し、企画会社は「どういうことなのか前後関係を調査中」と答えた。

 韓国の大学教授は「政界と政府は、ロボットをはじめとする最先端産業を育成するというスローガンを多数掲げているが、実際にはどのロボットが国産なのかも区別できないというあきれた現実をさらけ出した」と皮肉った。

■ラベルだけをすり変えた中国製ロボットが幅を利かす

 サービング・ロボットは、レストランやカフェで人の代わりにメニューを運び、店内を案内するロボットだ。現在、韓国国内のサービング・ロボットの市場規模は約3000台だ。来年は今年の3-4倍となる1万台にまで成長するものと予想されている。しかし、韓国国内のサービング・ロボット市場は、中国製に握られている。中国のプドゥテックが手掛けたロボットが2019年から輸入され始め、配達アプリ「配達の民族」を運営する「優雅な兄弟たち」が19年から同ロボットのレンタル事業を開始した。ロボット業界によると、現在韓国に普及しているサービング・ロボットのおよそ70%以上が中国製だ。

 しかし、サービング・ロボット事業を手掛ける業者は、サービング・ロボットの製造国を明確にしていない。現在「優雅な兄弟たち」がレンタルしている5種類のサービング・ロボットのうち3種類が中国のロボットメーカー「キノン」製と「プドゥテック」製だ。残りの2種類はLG電子の製品だ。匿名希望のロボット業界のある関係者は「多くのメーカーが中国企業の開発・生産したロボットを搬入してラベルだけをすり変え、まるで自分たちが開発したかのようにレンタル事業を行っている」とし「中国製を韓国企業が開発したかのように宣伝しても、現在はこれを阻止できる根拠がない」と話す。

 韓国のメーカーの中ではLG電子、現代ロボティクス、ベアロボティクス、ロボティーズが独自技術でサービング・ロボットの開発を手掛けている。しかし、中国のサービング・ロボットは相対的にレンタル料が割安で、市場における支配力を拡大している。実際、「優雅な兄弟たち」が扱っているLG電子製のサービング・ロボットのレンタル料が月155万ウォン(約15万円)であるのに対し、プドゥテック製は月130万ウォン(約12万5000円)となっている。ロボット業界では「中国製のサービング・ロボットの値段が安い理由は、中国政府の補助金のため」という声が上がっている。中国は、広東省深セン市と東莞市にロボット・クラスター(研究機関・企業の集合体)を造成し、ロボットメーカーに膨大な補助金を投入している。中国政府が支援する補助金規模は、これらメーカーの利益の20%に上るという。

■米国は自国のロボット産業を保護しているが、韓国は傍観のみ

 IT業界では、中国製のサービング・ロボットの拡散を野放しにしていてはならない、と主張する声が上がっている。サービング・ロボットそのものが最先端技術の結実体だからだ。サービング・ロボットには人工知能を基盤とした自律走行技術が搭載されている。ロボットとの通信のための5G(第5世代移動通信)など超高速インターネットのインフラと通信技術も適用される。このままでは、韓国が中国製のサービング・ロボットの競争力強化のための「テストベッド(試験台)」に成り下がってしまう恐れがあるというのだ。漢陽大学科学技術政策学科のキム・チャンギョン教授は「セキュリティーの問題もある」とし「中国製のサービング・ロボットの数が増えるにつれ、これらのロボットが収集する情報が中国に流出する可能性もある」と指摘する。

 最先端のロボット産業を保護するため、米国は2018年から中国製のロボットを輸入する際に、25%の関税を課している。一方、韓国への輸入には、これといった障壁がない。大邱慶北科学技術院(DGIST)のムン・ジョンイル研究副総長は「ロボット産業そのものも重要だが、ロボットを活用して韓国の主力産業の競争力と付加価値を高めるための案を探っていくべき」とし「韓国のロボットメーカーが自国で実力をテストできる十分な基盤を作ってこそ、世界的な技術競争でも有利に立つことができる」と述べた。

シリコンバレー=キム・ソンミン特派員、チョ・ユミ記者

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