韓国スポーツジムのトイレに捨てられる注射器、筋トレブームで広まる薬物乱用

アスリートではない一般人の間でも筋トレブームで薬物の乱用が広がる

 「トイレの便器に異物や注射器を捨てないでください」

 ソウル市冠岳区のあるフィットネスクラブに先月末からトイレの壁などに上記の案内文が貼られている。クラブ側は「筋肉を鍛えるための『ステロイド剤』を誰からも見られないトイレで注射し、使用後の注射器が捨てられるケースが増えているため」と説明した。会員のある男性(27)は「ネットやユーチューブを通じて薬を飲んで運動する人がいるという話は聞いたことがあるが、このように街中のクラブのトイレに案内まで貼られているのを見て驚いた」と語った。

 「ステロイド医薬品」はかつて一部のスポーツ選手が筋肉を増大させパフォーマンスを高めるために使っていたものだ。一時は大会などを前に選手たちが誤用あるいは乱用するケースが広がったこともある。最近はいわゆる「筋トレブーム」の影響で運動への関心が高まっていることもあり、特別な処方が必要ないこれらの製品が違法なルートで一般人にも急速に広がっているのだ。

 首都圏のある四年制大学でスポーツを専攻する男子学生(26)は「自分の周りだけで3人も錠剤のステロイド外用薬を飲んでいる」「誰にも言わずに飲んでいる学生はもっと多いだろう」と述べた。ヘルスクラブ会員になって4年のある男性(25)は「ネットの掲示板やテレグラムのメッセンジャーなどを使えば違法にたやすく薬が手に入る」と教えてくれた。

 ステロイド利用者が集まるネット掲示板には違法な製品を利用した後の状況も掲載されており、SNS(会員制交流サイト)でも関連する検索ワードを入力すると簡単に販売業者にアクセスできる。業者によると、希望する製品と名前、住所、連絡先さえ入力すれば直ちに注文が可能だという。

 ステロイド剤のような専門医薬品を専門家の処方なしに販売あるいは購入する行為は全て違法だ。サムスン・ソウル病院内分泌代謝内科のキム・ギュリ教授によると、男性ホルモンを人為的に注入する期間が2-3週間以上にもなると身体自体の生産能力が低下するという。キム教授は「心臓病や代謝能力の低下といった副作用もあるため、医師の監督下で治療目的でのみ使用しなければならない」と警告した。キル病院内分泌内科のキム・ビョンジュン教授は「短期間で筋肉が一気に増大して体格が良くなるように見えるかもしれないが、服用を続ければ睾丸(こうがん)の縮小、性的機能の減退などの副作用が出る」と指摘した。

 食品医薬品安全処によると、2018年から今年7月までに代表的なステロイド剤の一つでタンパク同化作用を持つアナボリックステロイドのオンラインでの違法販売は6169件摘発されたという。同処は来年から専門医薬品を違法で購入した場合は100万ウォン(約9万6000円)の過料とし、通報者には過料の10%以内で報奨金を支払うことにした。食品医薬品安全処サイバー調査チームのチェ・ギュハン団長は「最近は違法なステロイド剤に対する社会的な関心が高まっていることもあり、引き続き調査の範囲を広げていく計画だ」とコメントした。

チェ・ジェウ記者

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