【コラム】絶滅する「メード・イン・コリア」の自動車

【コラム】絶滅する「メード・イン・コリア」の自動車

 米ゼネラルモーターズ(GM)が韓国工場を枯死させる作戦に突入したようだ。GMの社内ナンバー2であるスティーブ・キーファー社長が今月初めに訪韓し、韓国工場でも電気自動車(EV)を生産するのかと思ったところ、とんでもない期待外れだった。EVどころか生産台数の拡充すら約束せず、むしろ韓国で発売する新車を全て輸入販売に切り替える計画を明らかにした。

 韓国の富平、昌原にある韓国GMの工場は年60万台以上を生産する能力を持っているが、GMは工場に仕事を回さない形で半分以上の設備をさびつかせている。GMは2018年、韓国産業銀行から8000億ウォン(約775億円)の支援を受ける条件として、10年間工場の維持することを約束したが、この状況ならば、GMは約束の28年を迎えた段階で未練なく工場を撤退させるとみられる。

 釜山地域の経済を支えてきたルノーサムスンの立場も同様だ。ルノーグループは昨年9月にようやく欧州向けの「XM3」の生産を釜山工場に任せたが、生産台数はピーク時の半分にも満たない。そして、釜山工場をルノーグループの全世界の工場でも最も収益性が低いと名指しし、撤退可能性を暗示している。

 GMとルノーは外国企業だが、昌原、富平、釜山に組立工場を設け、それぞれの地域を支えてきた。工場に直接雇用された従業員と部品下請け会社の雇用だけで数十万人に上り、それを基盤として生計を立てる地域の零細事業者ははるかに多い。毎年数十万台の「メード・イン・コリア」の車が輸出され、韓国経済にかなりの利益をもたらしてきた。

 10年後にもこれら工場が地域を支えていられるだろうか。不幸にもそうではない可能性が高そうだ。GMとルノー本社の韓国工場に対する発言を見れば、あす工場の稼働を中断すると言ってもおかしくない。13年連続赤字の双竜自動車は再建が不透明で、韓国国内に米国のテスラ、リビアンのようなスタートアップが登場する兆しもない。最悪の場合、数年後には「メード・イン・コリア」の完成車を販売するメーカーは現代自動車グループだけになるかもしれない。

 全世界の道路を走る韓国車が減れば、真っ先に地域経済が崩壊する。工場が止まってしまえば、あらゆる努力をしてみたところで、過去の栄光を取り戻すのは容易ではない。我々はそれを過去に地域の基盤産業が没落した地域で目にしてきた。

 これまで外国企業が賃金の安い中国ではなく、韓国に工場を設置した理由は高い品質だった。「メード・イン・コリア」であれば信頼して購入するという世界の消費者が多かったため、生産コストの高さを覚悟し、韓国に工場を設けた。ところが、ストライキを定期的に繰り返す強硬な労組が高品質という韓国の競争力を覆い隠す事態となった。これまでGMとルノー本社は韓国工場に対し、収益性と生産性を高められるという事実を示すように求めてきた。しかし、韓国工場は毎回それを証明することに失敗した。

 まだ対策を講じる時間が残っている状況で、今度は韓国政府が積極的に取り組む番だ。韓国にも労組によるストライキがない工場を設けることができると全世界の企業にアピールしなければならない。ストライキを行わない労働者が高品質の自動車を生産するスマート工場のモデル団地をつくるとか、一定の従業員を雇用すれば、雇用形態を柔軟化する実験も検討に値する。

ヨン・ソンオク記者

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