【記者手帳】ワクチンデマの拡散、このままにしておくのか

 1998年2月に英国の内科医アンドリュー・ウェイクフィールド氏が国際医学雑誌ランセットを通じ「はしかのワクチンが自閉症を誘発する」という論文を発表した。12人の子供を対象に調べたところ、はしかや風疹(ふうしん)などを予防する「MMR」と呼ばれるワクチンと自閉症に相関関係があると主張したのだ。その影響は非常に大きかった。英国では多くの親たちが「ワクチン恐怖症」に陥り、はしかワクチンの接種率が低下したため患者が突然急増したのだ。

【グラフ】韓国のワクチン接種と重症化率

 影響を重く見た英国の一般医学委員会がウェイクフィールド氏の論文を検証したところ、データが捏造(ねつぞう)されていた事実が明らかになり、2010年に論文は撤回され、ウェイクフィールド氏は医師免許を剥奪された。しかしそれは多くの子供たちがはしかの犠牲になった後のことだ。はしかワクチンを巡る問題は今もしばしば話題に上ることがある。

 最近になって韓国社会を揺るがす「コロナワクチンに関するデマ」も上記の「はしかワクチン騒動」と大きな違いはない。いわゆる「専門家」と呼ばれる人たちがきっかけをつくり、人間の心の中にある小さな不安に乗じてそれが一気に広がるというものだ。ある産婦人科医師が会見で「ワクチンには微生物が含まれている」と主張したときも、母親たちを中心にネットなどを通じてこの話が急速に広がった。他の医師たちはもちろん、微生物学者たちも「愚にもつかない話」として一蹴したが、ある親は「一人の医師が自分の医師免許を懸けておかしな結果を発表するだろうか」「何かの根拠があるのではないか」と書かれたメールを記者に送ってきた。

 親であれば誰でも子供の問題ではわずかなリスクでも避けたいと考えるし、それはいわば本能だ。「コロナワクチンを巡るデマ」に過敏に反応する親たちも実はほとんどがワクチン接種を受けている。韓国ではワクチン接種率は90%だ。副反応によって病院に担ぎ込まれ、あるいは一人で苦しんだとしても「集団免疫」という大義のために勇気を持って接種を受けた。しかし子供の問題となれば話は変わってくる。「わずか1万分の1の確立であっても、もし子供に問題が生じたらどうするか」と考えるのは親として当然のことだ。

 韓国政府は親たちに対し「子供や青少年に心筋炎(ワクチンの副作用)が発生する確率は成人よりも低い」「ワクチン接種による利益の方が大きい」などと説得しているが、そんな話が親たちの耳に入るはずがない。「自分の子供が犠牲になるかもしれない」という恐怖心があまりにも大きいからだ。そのためデマをデマとしてただ相手にしないのではなく、なぜ親たちがここまで不安を感じるのか理解しようと努力することが大切だ。誠意を持ってワクチンに関するデータを公表し、わずかな副作用であっても透明な形で説明しなければならない。それがあって初めて親たちも自分から子供たちにワクチンを接種させようとするだろう。最終的にデマをなくすのは「科学とファクトの力」しかないからだ。

パク・セミ記者

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