【萬物相】世界に類を見ない「駐韓中国大使館」

【萬物相】世界に類を見ない「駐韓中国大使館」

 1882年に清の軍隊がソウルに侵入し、「壬午(じんご)軍乱の背後」という理由で大院君を拉致していった。反抗した大院君を力ずくでかごに押し込んだ人物は当時23歳の袁世凱だったという。袁世凱は朝鮮の軍隊を鎮圧した功績で「総督」となり、政治はもちろん通信や船舶の運航に至るまで袁世凱の思いのままとなった。植民地レベルの内政干渉だ。1892年に鋳造された銅銭に「大朝鮮」という国号が入ると、袁世凱は「大」を外すよう命じた。朝鮮は1894年の清日戦争で袁世凱が去った後に再び「大」の字を入れた。中国の束縛から抜け出した瞬間を記念するために建てられたのがソウルの「独立門」だ。

 袁世凱以来、韓国と中国との関係を再びつなげたのは1992年の国交回復だ。最初に韓国にやって来た外交官たちはトウ小平の言葉通り「韜光養晦(とうこうようかい)」を実戦した。「韜光養晦」とは「自らの力を隠して高める」という意味で、韓国の発展を学ぼうとしたのだ。2006年の駐韓中国大使のように、故・金正日(キム・ジョンイル)総書記の訪中に関する情報を韓国の関係者に伝え逮捕されたケースもあった。2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加入できたのも相手国の心をつかもうとした外交が大きなプラスになった。

 ところが習近平の時代になると状況が完全に変わった。中華が復興したので「頭を下げよ」といった式だ。まさに「戦狼(ろう)外交」だ。オーストラリア駐在の中国外交官はオーストラリアの原子力潜水艦開発に対して「悪いやつ」と言った。パキスタン駐在の中国外交官は中指を立てる画像もアップした。韓国にいる中国外交官はもっとひどい。北朝鮮の核開発を阻止するため韓国がやむなく在韓米軍の「THAAD(高高度防衛ミサイル)」を導入したことに対し、北核を支援した中国の外交官たちが「韓中関係の破壊」として逆に脅迫した。韓国の企業関係者を呼び「報復」を警告したこともあった。韓国の大統領候補の発言にまで文句を言ってくるほどだ。

 駐韓中国大使館は9日「韓国の一部メディアと政治家が反中感情をあおった」と主張し始めた。世界の主要国やメディアは今、北京冬季オリンピックの不可解判定への批判を続けているが、これに対して中国は韓国だけを攻撃してきたのだ。「厳重な懸念と厳正な立場を明らかにせざるを得ない」との考えも示した。今の時代にどこの海外公館が駐在国のメディアや政治家に対して脅迫し訓戒するだろうか。不満があれば駐在国の外交部(省に相当)を通じて伝えることが外交の常識であり基本だが、これを完全に無視したのだ。

 習近平・国家主席は「韓国は中国の一部だった」と発言した。これに対して文在寅(ムン・ジェイン)政権は沈黙した。文大統領は中国を「高い山の峰」と言い、韓国を「小さな国」と言った。中国の閣僚級の人物が文大統領の腕をたたいても、また文大統領の特使を中国の地方官が座る下座に座らせても何も言わなかった。「世界に例のない駐韓中国大使館」は韓国自ら作り上げたものだ。

アン・ヨンヒョン論説委員

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