「佐渡金山問題、火が出たら消しに行く『火消し外交』では解決できない」

韓敬九・ユネスコ韓国委員会事務総長
「強制労役を認めない日本の態度はユネスコの価値に反すると強調すべき」
「日本でも反省する声が出るだろう」

 「国際社会における韓国のイメージは『気立てはいいが口下手な田舎のおじさん』のようなもの。佐渡の鉱山のように問題が噴出すると強く反発するが、普段は静かだ。ほかの国が韓国の声に耳を傾けてくれるようにするには、賢くて話の巧みな大人の役割を果たさなければならない」

 2月22日、韓敬九(ハン・ギョング)ユネスコ(国連教育科学文化機関)韓国委員会事務総長は、最近日本政府が佐渡金山のユネスコ世界文化遺産登録に向けて動き出したことについて「火が出たら消しに行く『火消し外交』では根本的に問題を解決することはできない」として、このように語った。韓日対立を浮き彫りにするよりも、朝鮮人強制労役の歴史を認めない日本のやり方はユネスコの追求する価値に合わないという点を強調すべきだという。韓事務総長は「韓日問題に引っ張っていったら、ほかの国は関心を持たないだろうし、どちらかの肩を持たなければならないとすると、力のある日本の側に立つ可能性が高い」と語った。

 韓事務総長は「日本と正面からぶつかって争うのではなく、国際社会で批判世論を造成し、広く包囲網をつくるべき」とし「日本内部からも『これでは恥ずかしい』という声が出るようにすべき」と語った。対応戦略の一環として、ユネスコ韓国委員会は現在、開発途上国の世界文化遺産登録申請を支援するワークショップなどを行っている。「こうした国々が韓国に友好的な世論を作ってくれると考えられる。また、開発途上国にもこのように良い遺産が多いのに、あえて論争の多い日本の遺産を登録すべきなのかという論理を展開することもできる」

 ユネスコは世界文化遺産でよく知られているが、教育・科学・文化を総括する超大型の国連機関だ。国連機関の中では唯一、加盟国に自らの活動を促進するための国家委員会を置いている。韓国は1950年、ユネスコに加盟してから10日もたたずして6・25戦争が起き、1954年に戦争の廃虚の中で韓国委員会を設立した。韓事務総長は「ユネスコは幾つもの国に援助を行ったが、韓国のように模範的な国はなかった」と語った。「ユネスコは戦争の最中も、小学校の教科書の印刷工場を設立するよう支援してくれた。潘基文(パン・ギムン)元国連事務総長も『ユネスコが援助した教科書で勉強した貧しい国の少年が事務総長になった』と、教育の重要性を世界に向けて強調した」

 韓事務総長は、外務考試に合格した後、外務部(省に相当)北米担当官室で働き、日本の東京大学と米国のハーバード大学で人類学を学んだ。その後、国民大学国際学部、ソウル大学自由専攻学部の教授を経て、ユネスコ韓国委員会文化分科委員などとして活動した。韓事務総長は「外務部で働いているときは、国連加盟もできていなかった時代なので、いつも拒絶されてばかりだったが、このごろは当時と違う韓国の立場を感じる」とし「昨年のユネスコ総会に出席したとき、英国・ドイツをはじめ韓国の事務総長に会いたいという国が多く、とても驚いた」と語った。

 ユネスコは、大国のソフトパワーがしのぎを削る場とも呼ばれる。昨年の時点で、中国と日本のユネスコ分担金の分担率は15%と11%。それぞれ1位、2位となっており、影響力は相当強いという現実的問題もある。韓事務総長は「分担金は少なくても、知的・道徳的な力を持つ国もある」とし「植民支配と戦争の残酷さを経験した韓国には、正論を語れる道徳的優位がある」と述べた。

 韓事務総長は、韓国の外交力を高めるためには国際舞台で活躍し得る専門家が必要だと指摘した。「日本は主な国際会議に、シニアとジュニアの専門家を必ずセットで連れてくる。私的な人間関係や食事の席、廊下や手洗いで交わす話も影響を及ぼすからだ」。韓事務総長は「専門家を育成して人的ネットワークを構築するため、サポートが必要な状況」だとし「人類共同体のために新たな議題を発掘し、議論を先導する能力を備えてこそ、真の先進国として生まれ変わることができる」と語った。

ペク・スジン記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲韓敬九・ユネスコ韓国委員会事務総長が2月22日、ソウル市明洞にあるユネスコ会館のオフィスで本紙のインタビューに応じた。韓事務総長の後方に、毛筆のハングルで書かれたユネスコ憲章が見える。/写真=キム・ヨンジョン客員記者

right

あわせて読みたい