【4月9日付社説】政権の不正を覆い隠す検察捜査権完全剥奪、大統領選挙に敗れても民心に背くのか

 与党「共に民主党」が検察の捜査権を完全に剥奪(検捜完剥)する方案を文在寅(ムン・ジェイン)大統領の任期中に成立させる考えを表明している。これまで検察が担当してきた主要6大犯罪の捜査を新たに設置する重大犯罪捜査庁に移し、検察は起訴だけを専門に行うというものだ。共に民主党はこれを力ずくで成立させるため法制司法委員会から共に民主党議員を外し、無所属の議員を配置した。与野党3対3の同数で構成される案件調整委員会に与党系の無所属議員を押し込み、4対2の形にしたのだ。こうなれば90日間の案件調整委員会での審議を省略でき、4月の国会で直ちに成立させることが可能だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領が就任後に拒否権を行使できないよう速戦即決でやってしまおうというのだ。

 これまで政権の顔色ばかりをうかがってきた検察も今回は堂々と反旗を翻した。大検察庁は「70年以上にわたり施行されてきた刑事司法の手続きを変更すれば、激しい混乱を引き起こし、重大犯罪への対応力が弱体化するだろう」として反対の立場を明確にした。高等検事長会議などでも反発の声が相次いでいる。

 このように共に民主党が強引に進める理由は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と李在明(イ・ジェミョン)元京畿道知事の不正に対する捜査を徹底して封じ込める意図があるとしか考えられない。検察は先日、産業通商資源部(省に相当)によるブラックリスト事件の捜査に着手した。李在明元知事が関係する大庄洞問題や弁護士費用の代納、権純一(クォン・スンイル)元大法官(最高裁判所裁判官)との裁判取り引き疑惑、法人名義のクレジットカード不正使用、城南FC後援金の賄賂疑惑に対する捜査も待ち構えている。月城1号機原発の経済性ねつ造や蔚山市長選挙への介入など、現政権の不正に関する捜査もいつでも始めることができる。検察捜査権完全剥奪はこれらの捜査をさせないことが目的だ。国民から与えられた立法権を、自分たちを守るために総動員しているのだ。

 共に民主党はチョ・グク元法務部(省に相当)長官の不正に対する捜査が本格化した際、検察改革という美名の下で捜査チームを解体して捜査権を奪い、検察総長(日本の検事総長に相当)を懲戒した。検察捜査権剥奪法を制定すると圧力を加え、当時の尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長を追い出した。高位公職者犯罪捜査処法を強行採決するため今回と同じく案件調整委員会で与党系の議員を利用する小手先の方法も使った。これらの暴走の結果は大統領選挙での尹次期大統領勝利と5年ぶりの政権交代だった。「検捜完剥」を叫んできた政府与党に対して国民が審判を下したのだ。それでも共に民主党は大統領選挙が終わってからわずか1カ月で自分たちの不正を隠そうと再び立法暴走を繰り返している。国会の議席数を信じて民心に反した場合、激しい逆風にさらされるのがこの世の道理だ。この世の恐ろしさを知るべきだ。

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