韓国政府の都合に合わせた「統計粉飾」との批判も

言うことを聞かない統計庁長を更迭

 政府機関が発表する諸統計は、国の公式記録として最も客観的な情報が盛り込まれていなければならない。それだけに、情報収集の過程やデータ管理は体系的かつ科学的なものであるべきだ。

 しかし韓国ではこれまで、統計を政治的に利用するといういわゆる「統計の政治化」論争が絶えなかった。文在寅(ムン・ジェイン)政権になって最初の統計庁長に任命された黄秀慶(ファン・スギョン)氏が、就任からわずか13カ月後の2018年8月に突然更迭されたのはその代表例だ。当時、統計庁が発表した家計動向調査統計によると、高所得層と低所得層の所得差を示す所得分配が弱まっていることが明らかになった。これは、所得主導成長政策で所得の二極化が緩和するはずだと言っていた文政権のばら色の展望とは正反対の結果だった。

 黄庁長が離任式などで「これまで統計が政治的な道具にならないよう努力した」「私はだいぶ、言うことを聞く方ではなかった」と発言したことから、統計が政治的に活用されているのではないか-という論争が大きくなった。保守系最大野党「国民の力」は「統計が気に入らないと言って統計庁長を更迭してしまった」「いつ首が飛ぶか分からないのに、大統領の前で真実を真実として、事実を事実として語ることができるか」と批判した。

 韓国政府の関係者は「政府の政策に効果がないとか、否定的な結果が出たといった分析は出し難い」とし「黄・元庁長の更迭は、こうした難しさを最も劇的に示す事件」と伝えた。

 その後、統計庁は調査対象の標本を再設定して調査方式も変え、その結果、所得分配の弱体化の程度は解消した。2020年に所得分配が改善したという統計は、担当の課長ではなくカン・シンウク庁長が自ら発表した。

 文在寅政権の代表的な失政に挙げられる不動産政策でも、誤った統計の活用が任期末まで問題になった。洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政相は今年2月、非常経済中央対策本部の会議で「江南4区の実取引契約を見ると、平均下落金額は3億4000万ウォン(現在のレートで約3460万円)に達することが把握された」として、住宅価格下落論を開陳した。不動産市場安定の証拠として江南のマンション価格の下落を持ち出したのだ。

 洪副首相は当時、住宅価格が下がった根拠として不動産院の統計を引用した。しかし当時、KB国民銀行が調査した週間マンション価格は、ソウル・首都圏いずれも下がっていなかった。さらに大きな問題は、3億4000万ウォンという下落幅もまた江南の全てのマンションを全数調査した結果ではなく、下落の申告があった16の団地だけを平均した数字にすぎないという点だった。一部の事例を、あたかも全体であるかのように表現したのだ。

ユン・ジンホ記者

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