危機に強かった円が揺らいでいる(上)

危機に強かった円が揺らいでいる(上)

 外国為替市場には「日本で地震が起きると、円高になる」という言葉がある。1995年1月に阪神淡路大震災が起きると、円相場は半年で1ドル=99円から85円へと円高が進んだ。2011年3月の東日本巨大地震でも、福島原発事故の時点で84円だった円相場が12年1月には76円を付け、円が10%以上上昇した。大規模な経済危機の際も同様だった。08年の世界的な経済危機の際、円は4カ月で110円から80円台にまで急騰した。「天が落ちても安全なのが円」だという信頼によって、危機が起きるたびに円買いが強まったからだ。

【表】過去5年間の円ドル・相場の推移と日本の経常収支推移

 危機のたびにその力を発揮してきた円の地位は以前ほどではなくなった。ロシア・ウクライナ戦争で世界経済の不確実性が高まったにもかかわらず、むしろ円安が進んでいる。3月28日、円相場は6年7カ月ぶりの円安水準となる125円10銭まで下落し、為替防御ラインとされてきた「黒田ライン」を割り込んだ。 円・ウォン相場も100円=980-990ウォン台に下落し、2018年12月以来3年ぶりに1000ウォンを割り込んだ。このため、円はもはや安全資産ではないという声も聞かれるようになった。大地震が起きても、北朝鮮が核実験をしてもびくともしなかった円が最近なぜ揺らいでいるのか。

■政府債務250%でも「安全資産」神話

 日本経済のファンダメンタルズ(基礎的体力)を校了すると、円が安全資産扱いされるのは矛盾している。昨年時点で日本の政府債務の対国内総生産(GDP)比は247.3%で世界最高水準だ。 15年にデフォルト(債務不履行)の危機を迎えたギリシャの政府債務(181%)を上回っている。経済成長率も慢性的に低い。2019年と20年にはそれぞれマイナス0.2%、マイナス4.5%を記録した。だからといって、米ドルのように確固たる基軸通貨でもない。そのため、「円=安全資産」という信頼は一種の「集団心理」だとする見方もある。皆が円を安全資産だと信じているので、安全資産として扱われているという意味だ。

 しかし、円は安全資産だという信頼を正当化する根拠もいくつかある。代表的なのは日本が保有する莫大な海外資産だ。昨年の日本の対外純資産(外国にある政府・企業・個人の資産から負債を差し引いた額)は356兆9700億円に達する。1990年以来30年余りにわたって世界首位だ。巨額な経常収支黒字も一因だ。2000年代初めまでは主に輸出で、それ以降は海外資産の配当・利子所得で黒字が続いている。2016年だけで約20兆円の経常収支黒字を記録した。

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