危機に強かった円が揺らいでいる(下)

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 また、日本は国の借金である国債の発行残高が多いが、これを日本の金融機関、すなわち日本国民が保有している点が他国とは異なる。日本の国債の90%以上は日本銀行や保険・年金機関などが保有している。かつてギリシャのように金融危機に陥った国々が、海外の金融機関や投資家に借金をしていたのとは異なる。このため、日本が破産する可能性はないという信頼に基づき、円が安全資産扱いされてきた。

■金利差拡大で揺らぐ円

 最近の円安進行は、米国とは異なる道を歩む日本の金利動向が最大の要因とされている。インフレに対応するため、3年3ヵ月ぶりに政策金利を引き上げた米国とは対照的に、日本銀行は3月18日、政策金利をマイナス0.1%に据え置いた。今年2月の消費者物価上昇率が7.9%に達し、40年ぶりの高水準となった米国とは異なり、日本の物価上昇率は0.9%にとどまっているからだ。

【表】過去5年間の円ドル・相場の推移と日本の経常収支推移

 このため、米日間で国債利回りの差はますます拡大なっている。2020年7月時点で米日の10年物国債利回りの差は0.8%(米国0.7%、日本マイナス0.1%)だったが、先月末には2.2%(米国2.4%、日本0.2%)に広がった。また、量的緩和を中止した米国とは違って、日本は依然として国債を買い入れながら現金を供給しており、円安が進むほかない状況だ。延世大国際学大学院の梁任錫(ヤン・イムソク)教授は「日本は金利をゼロ水準にしつつ、国債を発行して経済を維持してきたが、今になって金利を引き上げれば災難となりかねない。米国が金利を引き上げても、日本が追随して利上げを行うのは不可能な状況だ」と述べた。

 堅調だった経常収支の黒字基調が揺らいでいることも円安に影響を与えた。日本は11年の東日本大震災以降、原子力発電の割合を下げるため石油・天然ガスの輸入を大幅に増やしたが、ロシアのウクライナ侵攻で石油・天然ガスの価格が急騰すると、1月の経常収支が赤字に転落した。こうした傾向が続けば、今年の経常収支が40年ぶりに赤字に転落することもあり得るとの見方も出ている。

 では「円=安全資産」という公式は崩れるのだろうか。梁教授は「日本はこれまで、海外投資や技術投資で稼いだ資金で持ちこたえてきたが、今後国民を支える新たな動力を見つけることには失敗した」とし、「結局、安全資産の地位を失う可能性が高い」と予想した。一方、新韓銀行投資商品サービス本部のオ・ゴンヨン副部長は「最近のロシア・ウクライナ戦争のような要因は円の地位を揺るがすことにはならない。世界的な金融危機のような大規模な経済システムの変化に見舞われた際に、円が依然として安全資産かどうかが判明するだろう」と指摘した。

郭彰烈(クァク・チャンリョル)記者

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