対戦車用「ヒョン弓」対空用「新弓」…韓国に武器支援を要請したウクライナ(下)

 対戦車兵器のヒョン弓は、ジャベリン同様「撃ちっ放し(Fire and Forget)」可能なのが特徴。ミサイルが自ら赤外線イメージを利用して標的を追跡するので、発射直後に射手が現場から離脱できる。その分、射手が攻撃を受ける可能性を減らせることを意味する。発射後の誘導機能がない90ミリ・106ミリ無反動砲や、命中するまで最後まで射手が照準し続けなければならないTOW対戦車ミサイルは、発射直後に現場を離脱することができず、敵の攻撃に遭う可能性が高い。

 通常のジャベリンの価格が1発当たり1億ウォン(約1030万円)と推定されるのに比べ、ヒョン弓は3分の1の水準といわれ、価格競争力に優れている。加えて、貫通能力や有効射程もヒョン弓の方がジャベリンを上回ると評価されている。長期間の戦闘で対戦車ミサイルを急速に使い尽くしたウクライナ軍の立場からすると、ヒョン弓を欲しがるのは当然-というのが防衛産業界の説明だ。

 ウクライナが要請したと推定されるもう一つの兵器「新弓」は対空ミサイルだ。2人1組で運用し、重さは15キロにすぎず、携帯に便利だ。最大射程は7キロ。低高度で侵入する北朝鮮軍のヘリコプターを撃墜するため開発され、「ヘリキラー」と呼ばれる。ADDが2003年に新弓本体を開発したのに続いて、2014年には中心装備のシーカー(目標捜索装置)の開発にも成功し、国産化率は95%に達する。

 新弓もヒョン弓のように「撃ちっ放し」が可能だ。新弓は、発射後に航空機のエンジンから出る熱を捉えて追跡する赤外線ホーミング誘導方式を採択し、別途の照準は必要ない。しかも、「フレア」のような欺瞞(ぎまん)装備とエンジンから出る熱とを正確に識別し、目標物に命中させることができる機能も備えている。

 重火器で武装したロシア軍に比べ火力で劣るウクライナ軍は、ヒョン弓や新弓のような兵器を必要としている状況だが、当面、韓国政府がこうした兵器を支援する可能性は低い。韓国政府は、非殺傷用軍需物資や、医療物資などの人道的支援のみ可能とする立場を固守しているからだ。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領側も、「人道的支援を拡大する案を考慮している」との立場を表明し、武器支援とは距離を置いている。防衛産業界の関係者は「国家安全保障と直結する武器を、政府の承認なしに民間企業が単独で輸出するのは不可能」と語った。

キム・ムヨル記者

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