【4月21日付社説】国会掌握政党による良心と理性の喪失は政争以上の国家的事態だ

 韓国与党・共に民主党にかつて所属していた無所属の梁香子(ヤン・ヒャンジャ)議員は同党がごり押しする検察捜査権の完全剥奪(検捜完剥)法案について「良心に従い反対する」との声明を出した。共に民主党が国会法制司法委員会で検捜完剥法案を採決するには「無所属議員の同意が必要」と国会法で定められている。共に民主党は同党出身で選挙区が光州の梁議員なら自分たちの意向に従ってくれると期待し、所属する常任委員会を法制司法委員会に変更した。ところが梁議員が共に民主党の暴走を拒否し「善良な国民が苦痛を受けないか、私は自信がない」「国益のために今回の法案には従わない」との考えを示したのだ。「政治家としての人生を終え、全てを失ったとしても私は良心に従う」とも訴えた。全世界の正常な国で自分たちの犯罪行為に対する捜査を阻止するため、国の捜査機関を丸ごと廃止する法律を制定するケースなど前例がない。国会議員であれば当然反対すべきであり、今の共に民主党議員らも「良心宣言」などの形で反対の意思表明をすべき状況だ。

 梁議員が同調しないため、共に民主党は法制司法委員会所属で共に民主党の閔炯培(ミン・ヒョンベ)議員をあえて離党させ無所属とした。韓国国会の歴史でこれまで数多くの姑息(こそく)な手口が使われてきたが、今回ほど露骨なやり方は前例を見いだしがたい。共に民主党は国会で多数の議席を得て、その後は多くの無理強いや暴挙を繰り返してきたが、この「フェイク無所属議員づくり」は韓国の政党史に今後も長く「黒歴史」として語り継がれるだろう。

 共に民主党は「検察の捜査権と起訴権を分離する」と言い訳している。しかしその本当の意図が「文在寅(ムン・ジェイン)大統領と李在明(イ・ジェミョン)元京畿道知事による犯罪容疑の捜査をできなくするため」という事実はもはや誰もが知っている。共に民主党でさえその事実を隠そうとしない。検捜完剥法案には「検察が現在捜査中の事件まで警察に引き渡さねばならない」と明記されている。通常なら法律が施行される以前の状況は現行法に基づいて維持するのが法の原則だが、共に民主党はこれさえも無視しているのだ。大庄洞不正、青瓦台(韓国大統領府)による蔚山市長選挙への介入、産業通商資源部(省に相当、以下同じ)のブラックリスト、原発の経済性捏造(ねつぞう)、李相稷(イ・サンジク)議員の不正行為などに対する検察の捜査は全て中断となるのだ。

 検捜完剥法案の先頭に立っている黄雲夏(ファン・ウンハ)議員は蔚山市長選挙介入事件の重要な被告だ。崔康旭(チェ・ガンウク)議員もチョ・グク元法務部長官の息子に虚偽のインターン確認書を書いた容疑で一審で有罪を宣告された。こんな人間たちが事件に対する捜査権そのものを「蒸発」させようとしているのだ。

 犯罪の容疑者たちが捜査機関をなくす法律を制定する事態が21世紀の大韓民国で堂々と進められている。この常識外の暴挙を行うため、国会を掌握した巨大政党が良心をかなぐり捨て理性を放り投げた。これは単なる政争ではなく国家的事態だ。

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