【コラム】ウクライナ侵攻を嘲弄するこの国の平和主義者たち(上)

「ゼレンスキーは国民を戦争に追いやっている」
「平和のための戦争はダメだ」
韓国の平和至上主義者たちの主張はウクライナ人が流した血に対する冒涜

 青瓦台(大統領府)が動画共有サイト「ユーチューブ」にこのほど掲載した「文在寅(ムン・ジェイン)政権5年間の記録、誰も揺るがすことのできない国」の第1部「ただひたすらに平和です」を見た。冒頭に登場した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「我々が追い求めるのはただひたすらに平和」とはっきり言った。ところが、ベトナムのハノイで行われた米朝首脳会談失敗、南北連絡事務所爆破、弾道ミサイル発射などと続いた内容は、むしろ「平和を成し遂げるには、この政権のようにしてはならない」と他山の石とするのが適切だった。

 平和至上主義者たちの目には、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の戦争も愚かな所業に見えるようだ。ロシアがウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加入に反対したのにもかかわらず、彼らは「NATO加入を無謀にも推進したゼレンスキーが自国民を戦争に追いやった」と批判する。ロシアと西方諸国の間にある緩衝国・ウクライナの地政学的状況を考慮していないということだ。「ただひたすらに平和」という物差しをあてがえば、そうした非難も可能だ。しかし、平和だけが絶対的価値だとすれば、20世紀初めに国力が日本の藩の1つ分程度だった朝鮮の君主・高宗が銃を1発も撃つことなく国を差し出したことも平和のための選択となる。軍事力がロシアの20分の1に過ぎないウクライナも、盾突かずにひれ伏すべきだっただろう。

 ロシアとウクライナは30年余り前まで同じ国だった。当時は旧チェコスロバキアがソ連と西ヨーロッパの間の緩衝国だった。1968年にチェコスロバキア共産党第一書記のアレクサンデル・ドゥプチェクは多党制導入やメディア・経済自由化といった「プラハの春」を推進した。ソ連は20万の大軍と戦車数百台を動員して過酷なほどに鎮圧した。火炎瓶を手に戦車に対抗した国民約600人が死傷した。チェコは西側に救助を要請したが、冷たくそっぽを向かれた。ソ連との武力紛争が懸念されるというのが理由だった。ソ連はドゥプチェクをモスクワに連行した。

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