【5月12日付社説】「THAAD撤収考慮」「在韓米軍完全撤収」…崖っぶちだった韓米同盟

 米国のトランプ前政権で国防長官を務めたマーク・エスパー氏が先日回顧録で文在寅(ムン・ジェイン)政権当時の韓米同盟における危うい瞬間を赤裸々に明かした。エスパー氏はTHAAD(高高度防衛ミサイル)正式配備の先送りが続いた当時、2020年のカウンターパートだった徐旭(ソ・ウク)国防長官(当時)に「韓半島からのTHAAD撤収を考慮している」と伝えたという。2018年に自ら視察したTHAAD基地の生活環境が「悲惨」だったにもかかわらず、当時の文在寅政府は中国の顔色をうかがいこれを事実上放置したからだ。エスパー氏は「これが同盟国に対するやり方か」として米軍合同参謀本部議長にTHAAD撤収の具体的方策を検討するよう指示まで行ったという。

 エスパー氏は「韓国が中国の軌道に引っ張られる事態を懸念した」とも明かした。実際に文前大統領はバイデン大統領よりも先に習近平・国家主席と電話会談を行い「中国の影響力が日々強まっている」と賞賛し、THAAD三不を通じて中国に軍事面と安全保障面の主権を引き渡す衝撃的な譲歩も行った。文在寅政府による2019年の韓日軍事情報保護協定破棄の決定についてエスパー氏は「(韓日間の不和で)北朝鮮と中国だけが利益を得ていた」と指摘した。当時のトランプ大統領はこりごりしたかのように頭を振りながら「これほど偉大な同盟に価値があるのか」と皮肉ったという。それでも文在寅政府は「米国も理解した」とうその説明をした。

 エスパー氏は2018年1月にトランプ前大統領が在韓米軍の家族に退避を指示する考えだったことも明らかにした。退避令は戦争が近づいていることを意味する。外交や軍事の門外漢だったトランプ前大統領は当時、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と「火炎と怒り」「核のボタン」などの言葉で舌戦を繰り広げていた。エスパー氏はトランプ前大統領が在韓米軍の「完全撤収」を提案していたことも明かした。同盟国との関係を軽視するトランプ大統領と南北ショーのことしか頭にない文在寅政府が重なった時期だったため、韓米同盟は根本から揺らいでいたのだ。

 ウクライナがロシアの侵攻を受けたのは米国との軍事同盟関係がなかったからだ。北朝鮮は韓米同盟を瓦解(がかい)させるため執拗(しつよう)に工作を続けてきた。中国も全く同じだ。トランプ前大統領による在韓米軍撤収の動きに当時の国務長官は「2期目の任期の最優先課題にしましょう」と提案し、トランプ前大統領はこれに笑顔を見せて同意したという。2024年の米国大統領選挙でトランプ氏が再び当選する可能性を示す米国の世論調査も公表されている。安全保障と同盟関係は決して自動的に維持されるものではない。

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  • ▲米国のマーク・エスパー元国防長官/朝鮮日報DB

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