【5月16日付社説】新型コロナに「柳の葉を煎じて飲め」という北朝鮮

 北朝鮮で今月14日の一日だけで約30万人の新型コロナウイルス「有熱者(発熱者)」が新たに発生し、15人が死亡した、と北朝鮮の宣伝機関が明らかにした。北朝鮮が新型コロナ感染者発生を初めて認めた12日の発熱者は約1万8000人だったが、二日後にその16倍にもなるほど急増したということだ。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は「建国以来の大動乱だ」と言った。マスクをして政治局会議を主宰する姿も初めて公開した。それだけ新型コロナが深刻だということだ。

 さらに深刻なのは、北朝鮮の医療・防疫のレベルだ。北朝鮮が「感染者」という表現の代わりに「発熱者」という表現を使っているのは、診断設備がほとんどないためだ。正確な感染規模も分からない。北朝鮮住民のワクチン接種率は「ゼロ」だ。慢性的な食糧難で免疫力が低いのに加え、新型コロナに感染すれば致命的な状況になる可能性がある。ところが、北朝鮮の病院には新型コロナ治療薬はおろか、基本的な解熱剤すらない。

 朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は「柳の葉を煎(せん)じて一日に3回飲め」と住民に勧めている。新型コロナの治療法に「柳」を持ち出した集団は世界で北朝鮮が唯一だろう。「咳(せき)が出たらハチミツ」「息苦しくなったら窓を開ける」「気持ちを楽にせよ」とも言った。こうして4週間経っても「血を吐く、あるいは気絶・出血などがあれば病院へ行け」としている。中世式の民間療法で死ぬまで我慢しろということだ。金正恩総書記は「中国の防疫成果に学べ」と指示した。中国は住民に食糧を配給して居住地を封鎖したが、北朝鮮はそのような食糧すらない。予期できないような人道的危機を招く可能性がある。

 北朝鮮は新型コロナ感染拡大を正式に発表した直後も超大型放射砲3発を撃った。7回目の核実験も準備中だ。新型コロナ禍でも韓国の新政権や米国を狙った挑発は続いている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が新型コロナ防疫支援を提案しても北朝鮮の政権が受け入れるかどうかは未知数だ。核の暴走と非常識な防疫で死にそうになっているのは北朝鮮の住民たちだけだ。ワクチンと治療薬ではなく、「柳」で新型コロナに立ち向かおうと言って住民を死に追いやる金正恩総書記の時代錯誤的な暴政が嘆かわしい。

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