【萬物相】膝を突いたバイデン米大統領

【萬物相】膝を突いたバイデン米大統領

 膝を突いて目の高さを合わせて会話をする姿勢には「あなたを尊重し、あなたの言葉を聞きたい」という意味が込められている。背が低い子どもだけでなく、障害者や高齢者、負傷者に接する時、このような行為で敬意のメッセージを伝える。バイデン米大統領はおととい、日本の北朝鮮拉致被害者家族と面会した時、子を北朝鮮に奪われた高齢者たちの前で膝を突いた。故人となった長男の写真をポケットから取り出して見せながら、「子を失ったあなたの苦痛は分かります」とも言った。バイデン大統領は病気と事故で2人の子を亡くしている。

 北朝鮮が日本人拉致を認めて謝罪したのは2002年のことだ。それ以降の米大統領4人は全員、日本人拉致被害者の家族に会った。トランプ前大統領は在任期間が4年間だけだったが彼らに2回会った。拉致問題の象徴的存在である横田めぐみさんの父親が死去した時は哀悼の手紙を送った。トランプ氏がほかの人よりも特に情に厚い人であるようには見えない。米国と日本の報道機関は「ブロマンス(親しい男性同士)」外交のパートナーだった日本の安倍元首相に対する外交的配慮だと解釈した。

 北朝鮮の日本人拉致は1980年代初めから知られていたが、日本の外交で核心的な課題となったのは2000年代初めからだ。まだ40代の国会議員だった安倍氏が旗振り役となり、拉致被害者5人とその家族を北朝鮮から連れ戻すという成果も挙げた。国民の保護という国の基本に忠実だった。韓国の立場では受け入れられない問題が多くても、日本国民が彼を認めるのはそういう理由からだ。その後、拉致問題は対北朝鮮外交の「すべて」になった。米大統領の拉致被害者面会は日本の対米外交を計る尺度となった。

 意外なことにこの問題を渋っていた米大統領はオバマ氏だ。訪日当日まで面会要請にはっきりと回答しなかった。やっとのことで実現した面会ですら10分ほどで終わった。同じ米民主党所属なのでバイデン氏もそうではないか、と日本政府は懸念していたという。ところが、バイデン氏は予想をはるかに上回った。30分の面会で拉致被害者家族11人全員に対し、それぞれ話しかけた。被害者家族たちは「米大統領の気持ちが感じられた」と語った。

 日本人拉致被害者は17人だ。6・25戦争(朝鮮戦争)後の韓国における拉致被害者は516人に達する。6・25戦争時の拉致被害者まで合わせれば8万人超だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権時、拉致被害者は国民として扱われることすらなかった。共に民主党議員は北朝鮮が嫌がるという理由で拉致被害者の法的な名称を「失踪(しっそう)者」に変えようとする法案まで出した。政権交代後は変化が感じられる。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の就任式には拉致被害者家族と脱北した韓国軍捕虜が特別招待対象者として出席した。膝を突いた米大統領を見て、国家の基本をあらためて考えさせられた。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
関連フォト
1 / 1

left

  • 【萬物相】膝を突いたバイデン米大統領

right

あわせて読みたい