【6月10日付社説】北の全住民にワクチンと食料を提供できるカネでミサイルを発射した金正恩委員長

【6月10日付社説】北の全住民にワクチンと食料を提供できるカネでミサイルを発射した金正恩委員長

 今年に入って北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)や中・短距離ミサイルを33発も発射したが、これには8000億ウォン(約850億円)以上の資金を投入したという。これだけの額があれば北朝鮮住民全体にファイザー製のワクチンを接種できるし、あるいは今年の食糧不足分も購入できる。それほど巨額の資金がミサイル暴走に投入されたのだ。「愛民君主」と宣伝してきた金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の実際の姿だ。

 金正恩氏は「核強国を実現した。経済強国になるのも時間の問題」と大口をたたいている。ところが実際は「一滴の油、一粒の米、セメント一グラム、木材一切れでも大切にせよ」と住民に一層の節約を要求している。経済状況は1990年代の「苦難の行軍」時代に次ぐほど困難な状況だという。しかしその責任は常に下の人間に転嫁されている。

 コロナが流行しても「柳の葉を煎じて飲め」「せきが出れば蜜」「息苦しければ窓を開けてリラックスせよ」と指示するだけだった。中世の時代を思わせる民間療法で住民には「自分で生き残れ」と放置しているのだ。2020年に米国や欧州など国際社会がコロナ対策のために支援の手を差し伸べたときも、金正恩氏は1カ月にわたり新型ミサイルを9発撃った。北朝鮮住民の生命と健康は後回しで、ただひたすら政権を守るために核とミサイルの開発にのみ熱を上げているのだ。

 この金正恩氏に対して文在寅(ムン・ジェイン)前政権の関係者らは「民衆の生活を重視する指導者」「啓蒙(けいもう)君主」などと賞賛し、金正恩氏との首脳会談イベントを実現させるために彼のご機嫌取りばかりをしていた。さらに金正恩氏の要求通り韓米訓練を縮小し、対北ビラ禁止法まで制定した。金日成(キム・イルソン)父子がミサイルを発射した絵画を海外で展示する際には国民の税金まで投入したという。

 金正恩氏の関心は金氏王朝の維持にしかなく、北朝鮮住民は労働力の道具に過ぎない。北朝鮮は金正恩氏の統治資金と核・ミサイル開発の費用を確保するため密貿易や仮想通貨の窃盗などありとあらゆる手段を使っている。まずはその資金源から断ち切らねばならない。北朝鮮住民のための人道支援策を検討すると同時に、より強力な制裁により金正恩氏がワクチンと食料を買う資金でミサイルを撃てないようにすべきだ。

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