【コラム】中国批判本を排除する中国

 特派員として赴任したばかりのころ、中国の空港で本を押収されたことがある。出張で台湾へ行き、書店でノーベル平和賞受賞者の中国の詩人、劉暁波の詩集を1冊買って戻る途中、中国の税関職員に摘発されたのだった。中国では、外国の書籍を個人が思い通りに持ち込むことはできない。

 中国の大手書店に行ってみた外国人は、書店の華やかなインテリアにまず驚き、それに比べて貧弱な本の種類にまた驚く。小説やデザイン・美術書、見た目の整ったニュースキャスターらの自叙伝は多いが、肝心の、こんにちの中国を題材にしたり中国に批判的立場を取ったりしている本は見つけ難い。書店の一番目につきやすい位置には、習近平国家主席関連の著作コーナーが用意されている。

 中国と西側世界の境界で繁栄してきた香港も、もはや例外ではなさそうだ。最近、香港の中学校・高校では、数百冊の本が学校図書館から排除された。中国が香港国家保安法を制定した後、香港教育局が「国家の安全に抵触する書籍・刊行物を審議せよ」と指示した結果だ。およそ200冊の本をごみ収集車に載せて捨てたという、ある学校図書館の主任教師は、香港紙「明報」に「問題書籍なので、告発を受けて教師職を失う危険は消えたという安堵(あんど)感と、焚書(ふんしょ)の主人公になったという苦しみを共に感じた」と語った。

 ある学校の排除図書リストを見たところ、オランダ出身の歴史学者フランク・ディケーターの書いた『毛沢東の大飢饉(ききん)』が目に留まった。ディケーターは英国ロンドン大学で中国現代史を学び、香港大学の大学院講座教授を務めた有名な学者だ。同書は、毛沢東政権時代の中国を題材にした彼の「人民3部作」の2冊目に当たり、非現実的経済政策のせいで4000万人以上の中国人が強制労役や飢えで死んでいった「大躍進運動」を研究した書籍だ。大躍進運動については、中国共産党自ら「党の路線が正確に履行されずに生じた錯誤」だと認めている。大躍進運動自体は、中国でタブーではない。だが西欧の学界やメディアで高い評価を受けた同書は、中国では翻訳・出版されず、今や香港の中学校・高校の図書館からも排除されることになった。こうした流れは中国共産党の歴史に限った問題ではない。現在では、中華民族・中華文化に対する否定的評価に対しても「中国への冒とく(辱華)」「西側のイデオロギー的偏見」との攻撃が殺到する。

 中国の専門家らは、当局の検閲と宣伝の中で中華民族に対する自負心だけを持って成長した中国の若者層を懸念している。一部のネットユーザーらは今年、天安門事件の記念日に、当時犠牲になった数百人のデモ隊ではなく鎮圧の過程で死亡した軍人らを追悼する文章をソーシャルメディアに載せた。こうした人々は、攻撃的な民族主義の傾向を示す可能性が高い。6・25戦争を「正義の戦争」だと学び、.「中国は南の領土を一度も侵犯したことがない」という宣伝を歴史の全てだと信じる中国人が増えていくのは、中国のためにも残念なことだ。

北京=パク・スチャン特派員

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