【記者手帳】「モンキースパナ暴行」を許したバングラデシュ人バブさんへの温情

 「韓国人としてどれほど恥ずかしい気持ちになったか分かりますか? 若いころの貧しい米国留学時代も思い出して…」

 6月29日、記者に1本の電話がかかってきた。先月、モンキースパナで暴行した工場長を許したバングラデシュ人バブ・ヌルナビさん(30)のニュースを報じた翌日のことだった。電話をかけてきた人物は、京畿道水原市に暮らしているハンさん(85)。彼は、これから毎月バブさんに30万ウォン(現在のレートで約3万1000円。以下同じ)を寄付したいと言った。その上で、ハンさんは自分の話を打ち明けた。ハンさんは1960年に米国ミズーリ州へ留学したという。乏しい生活費の足しにしようと、皿洗いや図書館の蔵書整理、トイレ掃除など、やらなかった仕事はないという。記事を読んでいて、バブさんの直面した苦難を自分のことのように感じたという。

 驚くことに、こんな読者はほかにもいた。ソウル峨山病院肝移植・肝胆道外科のキム・ギフン教授も記者に連絡を取り、バブさんに100万ウォン(約10万5000円)を届けた。キム教授は記事を読んで、20代のころ京畿道安山へ医療ボランティアに出かけたときの記憶を思い出したという。当時「韓国では言葉が通じないという理由で自分を無視しているようだ」と訴える外国人労働者が多かったという。キム教授は「あのころ、そうした方々をもっと助けてあげようという思いがあり、今こそ行動に移すことにした」とし「金額は多くないが、8月にバングラデシュに戻るバブさんが妻と息子、娘に小さなプレゼントを一つずつ持っていけるようにという気持ちで届けることにした」と語った。バブさんの口座番号を教えてほしいというメールを送ってきた人もいた。メールは、売り上げ1兆ウォン(約1050億円)台水準の中堅韓国企業の名誉会長秘書室から届いたものだった。80代になるこの実業家の秘書室関係者は「会長は私費で寄付をしたいとおっしゃっていて、外部に知られることは望んでいない」と語った。

 6月30日の朝、バブさんが記者にショートメールを1通送ってきた。「知らない人が僕にお金をくれた」と一言書かれていた。電話をかけて安否を尋ねると、バブさんは今にも泣きそうな声で言った。「僕がお金をもらってもいいのかどうか分からない。ありがとうと言いたいけど、連絡先が分からない。いい人がたくさん、韓国にたくさんいる。ビザのせいで8月にバングラデシュに戻らないといけないけど、きっとまた遊びにくるよ」

 自分をなぐった人を無条件に許したバブさん。そんな彼を応援するため、連絡を取った市民。この人々の話を聞きながら、数日間、本当に温かい気持ちになった。韓国人に対するバブさんの愛情と信頼が変わらなければうれしい。

シン・ジイン記者

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