「脱北しても南が送り返す」…北朝鮮、精神教育に脱北漁師強制北送事件を活用

 韓国与党・国民の力の河泰慶(ハ・テギョン)議員は12日、2019年11月に起こった「脱北漁師強制北送」について「北送後、北朝鮮当局は住民らに対し『脱北しても無駄』という精神教育を行ったようだ」と伝えた。北朝鮮は脱北漁師強制送還の事例をその後の脱北阻止や内部結束などに活用しているというのだ。

 河議員はこの日インタビューで「漁師らは亡命意向書を書いた瞬間、法的に韓国国民になった」「文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮の機嫌を取るため、韓国国民である脱北民を死地に追いやった」と述べた。河議員はさらに「北朝鮮当局は漁師北送後、住民らに『脱北しても南韓当局が全員北朝鮮に送り返すので全く無駄だ』という精神教育を行っているようだ」「その後、軍事境界線を越えてくる脱北者たちは北送されることを心配し、韓国軍と当局を避けていた」とも説明した。

 韓国統一部(省に相当)は「脱北漁師北送」について、強制送還の正当性を強調するため彼らを凶悪犯とする表現を繰り返し使い、彼らが亡命を望まなかったと誤解する恐れのある内容が記載された報告書を作成し、国会に提出したことがこの日までに分かった。国民の力の太永浩(テ・ヨンホ)議員の事務所に提出された資料によると、統一部が2019年11月15日に国会に非公開で提出した報告書はその題目が「凶悪犯罪北朝鮮住民追放関連報告」になっていた。報告書が提出された時点で脱北漁師を強制送還してから8日が過ぎており、国内外で「脱北民の強制北送は人権弾圧」との批判が強まっていた。

 統一部はこの報告書の中で脱北漁師二人について「殺人犯たちは20代前半のがっしりした体格」「特殊訓練を受けた様子はないが、一人は普段から正拳修練などで体を鍛えていた」などの表現を使っていた。さらに別の部分では「もう一人は窃盗犯で、労働教養所に収監された前歴が確認された」などの内容もあった。処刑や犯罪の前歴を集中的に記載し、凶悪犯に仕立て上げたのだ。

 また報告書には彼らが送還を希望したと誤解しかねない記載もあった。例えば「彼らは船上で船長や船員ら16人を殺害し、『いったん戻ろう。死んだとしても祖国(北朝鮮)で死のう』と謀議した」との記載があった。当時の金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一部長官はこの点に言及し「亡命に真正性がないと判断した」と述べた。報告書には「彼らは保護を要請する趣旨を書面で作成し提出したが、亡命意志の真正性を認めることはできなかった」ともある。「亡命の意向」ではなく「保護要請」という言葉を使い、犯罪逃亡者のイメージを持たせようとしたのだ。

キム・スンヒョン記者

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