【寄稿】国家による国民に対する犯罪行為を正当化するつもりか

北朝鮮への強制送還・公務員殺害
前政権による職権乱用であり非人道的な犯罪行為
事件の関係者・黒幕は贖罪(しょくざい)も反省もなく正当化する態度はさらに問題

【寄稿】国家による国民に対する犯罪行為を正当化するつもりか

 前政権が国民を北朝鮮の手に渡して殺害を後押し、あるいは放置した二つの事件で国内外の世論がざわついている。一つは2019年11月、亡命を求めかつ憲法上は韓国国民である脱北漁師2人を強制的に北朝鮮当局に引き渡し、処刑させた事件だ。韓国政府は彼らを「船の上で数十人を殺害した凶悪犯」と主張しているが、そのことだけで強制送還は正当化できず、しかも彼らが乗っていた漁船からは凶器も血痕も見つからなかった。もう一つは2020年9月に北朝鮮側の海域で漂流していた漁業指導を行う韓国の公務員が数時間にわたり望遠鏡の可視距離にいながら、現場で救助の努力を一切せずに放置し、北朝鮮軍により射殺させた事件だ。救助隊の投入までは期待できないとしても、たびたび話題に上る北朝鮮との連絡チャンネルや海上での共用無線通信などを使った連絡は一度も試みられなかった。世論が沸き立つと当時の政府はこれを「越北事件」に捏造(ねつぞう)しようとした。

 国民の生命に対する過酷な職権乱用、職務怠慢、北朝鮮や中国で起こるような国民への非人道的な犯罪行為、先進国であれば政権崩壊や内閣総辞職が起こってもおかしくない国家による野蛮な行為が白昼堂々この国で起こった。しかもどちらの事件も国の最高権力者の指示で行われた可能性が高く、韓国軍、警察、政府の担当者など数十人が自分の意思あるいは上からの指示で関与した事件だった。国民に対する国家によるこれらの行為は、例えそれらしい政治的・政策的大義名分があったとしても正当化できない明らかな犯罪行為だ。直接・間接に関与した政府関係者らも積極的な加担であれ消極的な従順であれ、いずれもその責任から完全に逃れることはできない。

 さらに見苦しいことは、これら恥ずべき事件の隠蔽(いんぺい)された実態が多くの証言や証拠により明らかになり、国連、外国政府、国際人権団体などからの批判が高まっているにもかかわらず、事件の関係者や黒幕の中に謝罪や反省を表明する人間がいまだ一人も見当たらないことだ。そこには「凶悪犯」「亡命意思の不在」「南北関係」「統治行為」などあり得ない論理や毒舌で事件を正当化する声しかない。この国がなぜこんなレベルに落ち込んだのだろうか。韓国は現時点で先進国ではないにしても、それでもこれほどひどくはなかった。国際社会から非難を受け続ける北朝鮮と中国に対して過去5年にわたり屈従し、同じ考え方で足並みをそろえた結果、彼らの反文明的なウイルスに感染して霊魂や道徳性まで彼らと同質化してしまったのだろうか。

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