【寄稿】国家による国民に対する犯罪行為を正当化するつもりか

北朝鮮への強制送還・公務員殺害
前政権による職権乱用であり非人道的な犯罪行為
事件の関係者・黒幕は贖罪(しょくざい)も反省もなく正当化する態度はさらに問題

 この二つの事件を振り返ると幾つかの共通点が目につく。第一に後から必ず真実が解明され、大きなスキャンダルになることを事件当時から誰もが予想していた点だ。2018年12月に韓国の駆逐艦「広開土王」が日本の哨戒機と対峙(たいじ)してまで独島の北東200キロにある大和堆に急いで向かい、北朝鮮漁船1隻を救助して北朝鮮に送還したというあり得ない事件もあったが、これもいつか解明されるだろう。第二に二つの事件は北朝鮮に対して当然行うべき要求も拒否も一切せず、ただ平壌の顔色ばかりうかがっていた文在寅(ムン・ジェイン)前政権当時の青瓦台(韓国大統領府)の「口には出せない事情」がそのまま反映されたものだった。第三に両事件と関連する韓国政府中枢部の奇怪な判断と動きは、何か極秘で非公式な北朝鮮とのルートの存在を想定しなければうまく説明できない点だ。

 文在寅政権の外交・安全保障政策における意思決定の仕組みは青瓦台国家安保室が中心だったため、両事件の中心には常に青瓦台が存在していたが、その一方で国家情報院、統一部(省に相当、以下同じ)、国防部による積極的あるいは受動的な協力や黙認なしに実行は不可能でもあった。とりわけ北朝鮮関連業務で大きな責任を持つ統一部と国家情報院が事件の過程で正常に機能した形跡は見いだせない。統一部は海洋水産部職員が殺害された事件では「越北」という捏造(ねつぞう)に協力したし、脱北漁師強制送還事件では国家情報院の役割が注目されている。これらの役割遂行の背景が何であれ、青瓦台の意思や指示だけではこれら政府部処(省庁)の逸脱行動は正当化できない。

 統一部と国家情報院がこれまで見せてきた北朝鮮への融和的な態度は組織の論理から来る当然の帰結でもある。統一部は北朝鮮を喜ばせることで会談や協力事業の実績を一つでも残さなければ、その存在理由を見いだしがたい。この統一部に国家百年の大計を考え毅然(きぜん)とした対北朝鮮政策を期待することなど最初からできない。国家情報院はなおさらだ。北朝鮮に関する情報収集や監視、防諜(ぼうちょう)を本業とすべき情報機関が第一線で北朝鮮との連絡や交渉、南北首脳会談にまで関与し、平壌のご機嫌伺いを続けた結果、本来の仕事である北朝鮮の監視や防諜などの業務は完全になおざりになった。一部機能の他部処への移管、組織の分割、相矛盾する業務や機能の徹底した相互分離や遮断などの措置がこの機会に必要になってきそうだ。

イ・ヨンジュン元韓国外交部北核大使

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