全国民主労働組合総連盟(民主労総)金属労組所属の下請け労組による不法占拠とストが約8000億ウォン(約830億円)以上の損失を出し、51日で労使交渉が妥結してストは終了した。過激な闘争が続いたにもかかわらず組合側は賃金の30%引き上げなど当初の要求を貫徹できず、会社側が提示した4-7%引き上げ案をそのまま受け入れた。他の多くの組合員らはストの前からこの引き上げ案に同意していた。一体何のためのストだったのか。
ストに加わった120人以上の組合員のうち6人は玉浦造船所第一ドック(船舶を組み立てる作業場)を不法に占拠し、高所の手すりに上って「高空デモ」を行い、しかも引火物質のシンナーまで持ち込んでいた。一人は鉄製の構造物に入り込み自らの体を閉じ込めた状態でデモを行った。自分の命を武器とした自害恐喝に他ならない。この影響で船舶建造ラインがストップし、船舶引き渡しの期限を守れず被害額は雪だるま式に膨らんだ。大宇造船の役員や社員、巨済市民がストの中止をいくら呼びかけても不法デモは続いた。同じ民主労総金属労組所属の大宇造船組合員までが「仕事をさせてほしい」と訴えたが、民主労総はストを支援する集会を別に行うなど不法行為を助長した。
下請けの組合が「賃金の30%引き上げ」という当初の要求をあきらめた後、最後の交渉でこだわったのは「損害賠償訴訟の免除」を勝ち取ることだった。スト中止の要求を無視して不法行為を続け、数千億ウォン(数百億円)の損失を出させておきながら「責任は一切取りたくない」というのだ。この問題の交渉でまたも数日を費やし、損失額はさらに膨らんだ。最終的な妥結案にこの点の交渉結果は記載されなかった。
今回不法ストが行われる以前も大宇造船海洋下請け労組は昨年4月から5月まで4回にわたりドックを占拠し「賃金引き上げ」や「雇用の継続」などを要求したという。事業場の重要施設を占拠し、これを人質に過激な闘争を行ったにもかかわらず、これまで特別な責任を問わなかったためまたも同じことが繰り返されたのだ。
大宇造船海洋の8000億ウォンに上る売上損失は氷山の一角だ。何のためかよく分からない不法ストの影響でこれまで韓国社会に発生した被害は甚大なものだ。民主労総系列の過激な労働組合は何か機会があれば不法ストに乗り出し、耐えられなくなった会社側が責任を免除して妥協する悪循環が労働現場で繰り返されているのだ。
この悪循環を断ち切るには過激ストを行った不法行為者全員に対し最後まで民事・刑事上の責任を追及しなければならない。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は「不法行為に対しては法と原則に従って厳正に対処する」と表明した。今回の大宇造船海洋での不法ストをどう処理するか。これは政府による今後の労働改革に対する意思の強さを示す試金石になるはずだ。不法に対して責任を取らなければ不法は永遠に続くだろう。