「人権は進歩主義の核心的な価値なのに韓国の進歩は北の人権問題を無視」

李信和(イ・シンファ)北朝鮮人権国際協力大使
尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権で初めて任命…過去5年間空席
「北朝鮮の人権問題は与野党が対立する問題ではない」

「人権は進歩主義の核心的な価値なのに韓国の進歩は北の人権問題を無視」

 李信和(イ・シンファ)北朝鮮人権国際協力大使(写真)は先日、本紙とのインタビューに応じ「北朝鮮の人権問題は与党対野党の対立構図ではない。韓国対北朝鮮という問題だ」「北朝鮮の人権問題を巡って韓国国内で争ってはならない」と訴えた。北朝鮮人権大使は文在寅(ムン・ジェイン)前政権ではずっと空席だったが、先月5年ぶりに李氏が任命された。

 李氏は与野党の合意で成立した「北朝鮮人権法」がこれまで6年にわたり施行できていないことを「残念」と語った。李氏は「本来人権問題は進歩(リベラル)の核心的な価値だが、韓国の進歩は北朝鮮の人権問題から顔を背け、人道支援や交流・協力にばかり力を入れている」「逆に保守が北朝鮮の人権問題を重視する傾向が韓国では明確になっている」との見方を示した。李氏は「北朝鮮の人権問題は普遍的価値の観点からアプローチすれば、野党も反対する大義名分がどうしても弱まるだろう」とした上で「米国はすでに北朝鮮人権法を施行している。(韓国野党の)共に民主党は自分たちが同意した北朝鮮人権法を実行に移すべきだ」と主張した。

 李氏は「米国では与野党が協力して全世界の民主主義と人権保護のためNED(全米民主主義基金)に支援を行っている」「韓国の北朝鮮人権財団も韓国版NEDとし、北朝鮮の人権問題を扱うべきだ」と求めている。さらに「北朝鮮での人権侵害の加害者に責任を問うため」として「記録保全の重要性」も訴えている。李氏は「今は北朝鮮の加害者は処罰できないが、人権侵害の記録を集めて保存しておけば、後から処罰を行う根拠になる」「これは(北朝鮮での人権侵害を防ぐ)予防的な措置になるだろう」とも説明した。

 李氏は「北朝鮮の人権問題解決は大韓民国の国格を高める道だ」「とりわけ韓国軍捕虜、拉致被害者、抑留者、脱北者問題を関心を持って見守りたい」と述べた。離散家族問題については「国際社会において離散家族問題は強制分離の概念で通っている」と紹介し、離散家族再会問題を新たな方法で解決する考えも示した。李氏は「人権問題の基本は恐怖からの自由と飢饉(ききん)からの自由だ」とした上で「北朝鮮漁師の強制送還問題では凶悪犯かどうかなどで韓国国内で対立が起こったが、その点ではなく北朝鮮が彼らをどう処理したか、国際協力を通じて一致した声で追及すべきだ」と指摘した。

 李氏は尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権で最初の北朝鮮人権大使に抜てきされた。梨花女子大学を卒業後、1994年に米メリーランド大学で博士学位(国際政治学)を取得し、2003年に高麗大学教授となった。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)研究員、国連ルワンダ独立調査委員会事務総長特別諮問官などを歴任した。北朝鮮との因縁は1997年、ハーバード大学在職中に「脱北民の難民としての地位」に関する米国の論文を韓国に紹介したことで始まった。その後は「『人類の安保』という概念を北朝鮮の人権問題に適用すべきだ」とする自らの論文を発表した。国際機関で長く活動し、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相ともつながりがあるという。息子が兵役中という李氏は崔善姫氏について「2008年の国際会議で初めて会った。息子が金日成大学に進学したと自慢していた」というエピソードも伝えた。

キム・ミョンソン記者

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