【コラム】トランプはなぜ平沢上空のヘリで所有欲を燃やしたのか

 トランプ前米大統領が在任中に韓国を初めて訪問したのは2017年11月だった。平沢米軍基地に立ち寄り、ヘリコプターでソウルに向かう途中、地上に広がる巨大な建築群が目に入った。驚いたトランプ氏は「いったいあれは何だ(What the hell is that?)」と叫び、同乗していた米政府関係者が「サムスン電子の(平沢)半導体工場です」と告げた。

 このエピソードは2年後に再び韓国を訪れたトランプ氏が韓国の財界人との懇談会で自ら明かし、世間に知られるようになった。トランプ氏は「私が今まで見た建物のうち最も大きいものの一つだった」とし、サムスンの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長に向かって「本当にすごい」と繰り返し称賛した。ところが、トランプ氏が言及しなかった未公開発言がもう一つあった。韓国側関係者によれば、当時ヘリの機内でトランプ氏は「あれは米国に建てるべきだったのに…」と残念がったという。欲しい物は必ず手に入れてしまうというトランプ氏が米国にない最先端の半導体施設を見下ろし、何を考えたのかは想像に難くない。

 トランプ氏の燃え上がる所有欲は、それから4年後に現実となった。2021年5月、サムスン電子は20兆ウォン(約2兆円)余りを投資し、米国に半導体工場を新設する計画を発表した。李在鎔副会長がホワイトハウスを訪れ、米大統領の側近と調整した後、建設地はテキサス州タイラー市に決まった。そこには7ナノメートル以下の超微細製造プロセスによる生産ラインが建設されるとの見方が有力だ。規模も製造工程の水準も平沢クラスの最先端施設になる見込みだ。自国領土内に半導体生産網を構築するという米政府の執念が実を結んだことになる。

 それは始まりにすぎなかった。タイラー工場が着工されるや否や、サムスンは追加投資計画書をテキサス州政府に提出した。20年間で計250兆ウォンを投資し、生産ラインを11カ所に新設するとの内容だった。 計画が公表されると、サムスン側は「終了する税金減免の優遇を引き続き受けるため、事前に申請書を提出しただけだ」とし、実際に何カ所に投資するかは未定だと説明した。 しかし「最大11カ所」という可能性だけでも衝撃的だった。

 これは考えれば考えるほど恐ろしいことだ。半導体生産拠点を巡り、平沢とテキサスが競争に突入したことを意味するからだ。現在でもサムスンは中国・西安と米オースティンに工場を持っているが、技術的な難度の低い旧式ラインだ。7ナノメートル以下の超微細製造プロセスや極端紫外線(EUV)露光装置といった先端工程は全て韓国国内が担っている。しかし、今後は韓国と米国の投資環境を考慮し、有利な場所で生産を行う構えだ。半導体だけで韓国の輸出全体の13%を担うサムスンが米国に工場を大規模に建設すれば、どんなことが起きるだろうか。経済的にはもちろん、半導体基地として韓国が持つ安全保障戦略的価値も低下するだろう。

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