【コラム】韓中国交樹立30年と韓台断交30年の日

 30年前の1992年8月25日付けの朝刊を見ると、前日の韓国と中国による国交樹立のニュースが大きく報じられていた。1面から複数面にわたり、緊迫した国交樹立前後の状況や国際社会の反応も伝えられた。しかしこれに劣らず大きく取り上げられた記事は韓国と台湾(中華民国)の断交を伝えるニュースだった。本紙も社会面のトップ記事でソウル・明洞の台湾大使館撤収現場の状況を紹介した。華僑学校の吹奏楽部が演奏する国歌に合わせて青天白日旗(台湾国旗)が下ろされる様子や、それを見つめる台湾人が涙を流す様子などを伝えていた。

 韓国と中国の国交樹立は当時の盧泰愚(ノ・テウ)政権による北方政策で最高潮の出来事だった。これをきっかけに国際社会における韓国の外交的・経済的影響力は飛躍的に高まった。しかしこれとは別に台湾との関係を整理する過程に対する反省は今なお続いている。当時の韓国政府は台湾政府に対し、断交が避けられないことへの十分な説明や、最大限配慮し退路を開くことなどができたはずだが、実際はそれが不十分だった。影響で台湾では反韓感情が広がり、両国の感情的対立にも火がついた。これについて複数の専門家は「断交当時の台湾人の悔しい思いから始まった」と指摘している。

 韓中国交樹立30周年は同時に台湾との関係が非公式なものに転換してから30周年でもある。韓中国交樹立当日に撤収した台湾大使館には中国大使館が入り、かつての建物は取り壊され新しい建物が建設された。大使館の向かいにある台湾系の漢城華僑小学(小学校)はつい先日建て直された。コロナ前まで韓国と台湾は互いに非常に人気のある海外旅行先だった。台湾で韓流コンテンツが日常的に見られ、黒糖タピオカに代表される台湾の食文化も韓国人の日常に入り込んだ。今も北東アジアの隣国であることを示す一つの事例だ。これは「強力な反共体制」から「高速経済成長」や「民主化」へと続く現代史のさまざまな出来事を共有しているからでもある。

 韓国政府には今後も「非公式」という形で台湾との関係にもっと関心を持ってほしい。台湾が韓半島情勢における重要な変数として浮上しているからだ。米国議会下院のナンシー・ペロシ議長の台湾訪問をきっかけに先日行われた中国による軍事演習の際には、中台関係と南北関係が非常によく似ていることがあらためて浮き彫りになった。「有事に最前線の領土がまず占領される可能性(台湾の金門島と韓国のペンニョン島)」「軍事境界線が無力化される危険性(台湾海峡中間線と韓半島の非武装地帯)」「核兵器保有による戦力の非対称」などはまさにそうだ。最近は台湾海峡有事に在韓米軍が派兵される可能性まで浮上し、中台関係は韓半島情勢における常数として固まりつつあるのだ。

 これは南北関係や韓中関係において、韓国が台湾との関係を足台にできる可能性が出てくることを示唆している。最近になって欧米諸国は中国の反発にもかかわらず台湾との関係強化に乗り出しているが、これらはどこも韓国と同じくかつて台湾から中国に「乗り換え」をした国々だ。彼らが台湾との関係強化を通じて追求する国益は何か、そしてそれを韓半島情勢に適用できないか今こそ綿密に検討を進めてほしい。

鄭智燮(チョン・ジソプ)記者

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  • ▲1992年8月24日午後4時からソウル明洞の中華民国(台湾)大使館で最後の国旗降下式が執り行われ、華僑の女子生徒たちも数多く出席した。青天白日旗が下ろされると、多くの生徒たちがこみ上げる感情に耐えられず涙を流した。/朝鮮日報DB

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