国際LNG価格が2年間で35倍に…韓国電力公社、発電会社に代金支払えない事態も

 韓国の産業通商資源部と韓国電力公社(韓電)が物価上昇の懸念にもかかわらず、昨年末に予告した電気料金値上げ分以外に追加値上げを検討しているのは、ロシア・ウクライナ戦争による原油・ガス急騰が短期間に解消される可能性は薄いとの判断があるためだ。このままでは、かつて優良企業に挙げられていた韓電が回復不能状況に陥りかねないとの懸念もある。また、エネルギー価格の高騰にもかかわらず、今夏の最大電力需要が過去最高を記録し、電気料金の現実化を通じ、過度な電気使用を抑える思惑もある。

【グラフ】電気・ガス料金値上げの推移

 韓国政府はガス輸入量を早期に確保し、今冬の電力需給には問題がないという立場だが、世界各国が天然ガス確保に乗り出しており、韓国にとって最大ガス輸入先オーストラリアは輸出制限まで検討している。電気料金の値上げ要因はいくつも重なっている状況だ。

■2年3カ月で35倍に上昇した国際LNG価格

 エネルギー業界によると、2020年5月にMMBtu(百万英国熱量単位)当たり2ドルを下回った北東アジアの液化天然ガス(LNG)スポット価格(JKM)は先月末、70ドルを突破した。欧州の対ロシア制裁に対する反発で、ロシアが欧州向けの天然ガスパイプラインのバルブを閉め、欧州産ガス価格が急騰すると、北東アジアにも影響が及んだ結果だった。9月の欧州での天然ガス価格は軟化し、JKM価格も30-50ドルに下落したが、20ドル台だった1年前と比べれば依然として大幅な高値だ。一部には真冬には100ドルまで急騰しかねないとの懸念もある。

■急騰する電力卸売価格

 北半球が冬に入り、暖房用需要も増えるほか、ロシア・ウクライナ戦争の終結も遠い中、LNG価格の上昇は都市ガス料金はもちろん、電気料金まで揺るがしている。LNG国際価格の上昇がガス公社の発電用都市ガス料金の上昇を招き、発電会社が韓電に供給する電力卸売価格まで急騰させている。電力市場では原価が最も高いLNG発電を基準に卸売価格を決定する。

 発電会社は昨年第2四半期に1キロワット時当たり70-80ウォンで韓電に電力を供給していたが、今月は230ウォンまで急騰した。しかし、韓電が家庭や企業など電力消費者に販売する電気料金は、今年2回値上げされてもなお120ウォン水準だ。韓電が仕入れ価格の半値で電気を売っている計算になる。

 産業通商資源部は韓電が発電会社から買い入れる電力価格に上限を設ける制度も検討したが、民間発電会社が強く反発したために断念したという。

 こうした状況で、今年8月の月平均最大電力需要は8万375メガワットで、前年同月に比べ4%増え、電力消費は増大を続けている。今冬には7月7日に記録した史上最大の電力需要を更新すると予想される。

■政府系企業の経営難、結局は消費者・国民の負担

 金融情報業者FNガイドによると、証券会社が予想する今年の韓電の売上高は68兆5676億ウォン、営業赤字は28兆8423億ウォンだ。営業赤字の規模は売上高の42%に達する。問題は政府系企業である韓電とガス公社の経営難が会社レベルにとどまらないことだ。

 赤字の累積を受け、韓電は5月から発電子会社への電力購入代金(毎月4回)を1回先送りできるように規定を変えた。いわゆる掛け売りを可能にした形だ。このままでは社債発行も滞るため、韓電法を改正して発行限度を増額することも検討中だが、場当たり的な対策にすぎないと指摘されている。電力業界関係者は「韓電の財務構造が悪化すれば、電気を販売した発電会社にタイムリーに代金を支払えない事態まで起きる。結局、電力産業の生態系が崩れることになる」と話した。

趙宰希(チョ・ジェヒ)記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲19日午前、ソウル市内の住宅に設置されている電力メーター(写真:NEWSIS)
  • 国際LNG価格が2年間で35倍に…韓国電力公社、発電会社に代金支払えない事態も

right

あわせて読みたい