「人は字幕に誘導される」…音声認識研究者、韓国MBCの字幕を「悪意のあるデータ操作」と批判

「尹大統領NY発言問題の核心は『データ変造』」

「人は字幕に誘導される」…音声認識研究者、韓国MBCの字幕を「悪意のあるデータ操作」と批判

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「米ニューヨーク発言」をめぐって、「言った」「言わない」の水掛け論が政界で激しくなっている中、ソウル大学電気・情報工学部のソン・ウォンヨン名誉教授は「問題の核心はデータ変造だ」と指摘した。同教授は長年にわたり音声認識を研究してきた。2018年には「Google AI集中研究アワード」で音声認識関連研究により受賞している。

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 ソン教授は9月29日、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「フェイスブック」で、「でたらめな字幕は音声編集変造と同様の役割をする。データ変造はわずかなことであっても容認されてはならない」と述べた。

 ソン教授は「なぜ、ある人には『バイデン』と聞こえるのに、ほかの人にはそうは聞こえないのだろうか。私はその音を何度も聞いたが、絶対そのようには聞こえない」「当然、『バイデン』と聞こえる人の方が耳がいいと信じる根拠はない。私は長年、音声認識を研究してきたが、音声認識は単に耳に聞こえる音にばかり依存しているわけではない。なぜなら、人々の発音はあまりにもでたらめだからだ」と説明した。

 その上で、同教授は「尹大統領のニューヨーク発言は非常に雑音が多くて不明瞭(めいりょう)だが、これにMBCは恣意(しい)的に字幕を付けて放送した」「ほとんどの人々はこの字幕通りに聞く。『音』通りに聞かず、『字幕』通りに聞くのだ。字幕は非常に鮮明な事前情報の役割をするためだ」と話した。そして、「『バイデン』と聞こえるという人が多いが、それは既に字幕を見ているからだ」「大統領の発言を自動音声認識システムにかけてみたが、私がテストしたどの音声認識システムも『バイデン』という単語は検出できなかった」と言った。最も正確なネイバーのCLOVA音声認識システムから出てきた答えは「新人がしてくれなくて作ったら赤っ恥をかいて」だったという。

 同教授は「研究者の倫理上もデータ変造は最悪の違反とみなされる」「もちろん、大統領が使った単語の一部は少し聞き苦しいと思うかもしれないが、でたらめな字幕編集と比較するようなことではない」とし、「何よりも野党や一部メディアもこの件でMBCを擁護すべきではない。データ変造が言論の自由と混同されれば、正直さ・透明性・論理的説得ではなく、ウソ・たくらみ・扇動が飛び交う世界になるだろう」と主張した。

 ソン教授はその翌日の投稿では「MBCが字幕を付けて放送した尹大統領のバイデン侮辱疑惑を、訪韓したハリス副大統領が『disinformation』と表現したが、これは正確な単語選択だ」「でたらめな情報は二つに分けることができる」として、「misinformation(故意性のないミスにより誤って伝わった情報)」と「disinformation(故意性や悪意のあるでたらめな情報)」を挙げた。

 そして、「字幕をでたらめに付けたのは故意性や悪意のあるデータ操作だ」「国民の60%が『バイデン』と聞こえると言っているが、それは私が昨日説明した通り、既に字幕を見ているからだ」と強調した。同教授はこれを「字幕操作の危険性を示すデータだ」と説明した。

 その上で、「このようなdisinformationを痛烈に批判しなければならない記者たちが尹大統領の謝罪を主張しているということは、実に気の毒に思う」「中身がウソであることは見えず、ただ見た目をあげつらっているものだ」と言い、最後に「disinformationに寛大な社会は結局、扇動の犠牲になる」と述べた。

パク・ソンミン記者

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