【萬物相】言論の自由がない国の大使が言う「メディアのせい」

【萬物相】言論の自由がない国の大使が言う「メディアのせい」

 中国の大学には、講義の際に絶対言及してはならないという7つの「七不講」がある。そのうちの一つが「言論の自由」だ。中国メディアは新聞の原稿枚数や放送のレポートの長さまで中国共産党の指針に従わなければならない。習近平国家主席の記事よりほかの指導部の人物の記事の方が長くてはいけない。生中継も許可されていない。社会不安を生じさせたり、西洋の価値観を鼓吹したり、中国政府の政策を漏えいさせたりする報道は禁止だ。習近平思想の試験に合格した人だけに記者証が与えられる。

 習主席は2016年に3大官営メディアを訪れ、「党の指針に従う」と忠誠を誓わせた。これに対して、ソーシャル・メディア界のあるスター企業経営者が「言論は党ではなく国民のもの」と言った。すると、彼のアカウントはすぐに閉鎖され、表決・選挙・被選挙権もはく奪された。フェイクニュースの取り締まりや世論浄化だと称して随時、軍事作戦でもするかのようにメディアを取り締まる。指針に従わなければ処罰される。武漢で新型コロナウイルスに関して初めて取材した記者は懲役4年の刑を受けた。

 中国政府は香港内の批判報道を防ぐために、政府寄りの企業を前面に押し出して香港の主要メディアを次々と買収した。それでも言うことを聞かなかった蘋果日報(アップルデイリー)は株主が拘束され、廃刊になった。中国政府の気に障るスクープを取材した日本人記者は中国国家安全部に連行され、取り調べられて追放された。最近の中国メディア各社は習近平という偶像を崇拝中だ。習近平氏に対して毛沢東と同じような扱いをしているという。

 中国には言論がない。存在することさえできない。すべてが共産党の宣伝機関で、記者は宣伝機関員だ。中国にも海外特派員がいるが、記者を装った中国共産党情報員だと考えるのが正しい。ところが驚くべきことに、この共産党宣伝機関は自分たちのことを「言論(メディア)」だと主張している。中国共産党の1党独裁と1人偶像崇拝に「人民民主主義」と民主主義の名を付けているのと同じだ。数年前、東京で行われた韓中日ジャーナリスト会議で、中国側団長が「当然、言論とは…」と言って20分以上も説教調の講釈を垂れた。恥ずかしいと思っていないようだ。

 駐韓中国大使が報道関係者団体「寛勲クラブ」の招待討論会で「韓国の一部メディアが中国に対して過度に否定的な報道をしたことが、現在の両国の国民感情に不和を招いた主な原因だ」と言った。両国間の国民感情が悪くなったのは中国のせいだ。北朝鮮の核を防ぐための終末高高度防衛ミサイル(THAAD)をめぐって韓国を攻撃し、「嫌韓」を助長した。これに対する反作用が韓国の国民感情だ。言論が存在しない国の官僚たちは外国メディアが嫌だろう。自国ならすぐに刑務所送りにしているはずだ。それができないから、韓国メディアのせいにするわけだが、実にあきれたことだ。

ペ・ソンギュ論説委員

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