【萬物相】「私に感謝しろ」という文在寅前大統領

【萬物相】「私に感謝しろ」という文在寅前大統領

 世の人々は「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉をよく口にする。心から出た言葉である時もあるし、儀礼的または政治的レトリック(修辞学)として使う時もある。だが、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は「ありがとう」という言葉を特異な使い方で使う。文前大統領は以前、ソウル市内の飲食店で安哲秀(アン・チョルス)氏(現国会議員)と大統領選候補一本化のための会合をした後、「○○○という飲食店の名前はどれほど美しいことか。その名前を使ってくれて本当にありがとう」と言った。何がありがたいのかの説明はなかったが、会合後に自身が一本化された大統領候補になったのがうれしいという意味のように聞こえた。

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 文前大統領は2017年3月、当時大統領だった朴槿恵(パク・クンヘ)氏の弾劾直後、貨客船セウォル号沈没事故現場に近い彭木港(全羅南道珍島郡)の芳名録に「子どもたち(事故で犠牲になった修学旅行の高校生たち)よ、君たちはろうそく広場の星の光だった。君たちの魂が1000万のろうそくになった。申し訳ない。ありがとう」と書いた。申し訳ないのは分かるが、事故犠牲者に感謝するなどという言葉は決して言ってはならないものだ。誰の耳にも、「セウォル号事故のおかげで弾劾が成立し、私が大統領選挙で勝てた」と言っているように聞こえた。文前大統領でない別の人物が事故犠牲者たちに「ありがとう」と言ったら政治生命が終わっていただろう。

 文前大統領は退任後に出版したエッセイ集『文在寅の慰め』で、「私を必要としてくれてありがとう。おかげで私はもっと頑張ることができた。私を疑ってくれてありがとう。おかげで私はもっと正直になれた。私を理解してくれてありがとう。おかげで私はもっと信念を貫いて仕事をすることができた。私を憎んでくれてありがとう。おかげで私は強くなることができた」と書いている。本当にありがたいという思いを表しているのではなく、自分がよくやったという自画自賛であり、誰かを非難しているのだ。

 文前大統領たちは「私たちに感謝してほしい」という言葉もよく口にする。任鍾晳(イム・ジョンソク)元青瓦台(大統領府)秘書室長は今年3月の大統領選挙の時、「政権の審判というスローガンは不当だ」「最後まで心を砕いている大統領に『お疲れさまでした』『ありがとうございました』と言うべきではないのか」と言った。文前大統領は退任前のインタビューで、「住宅価格高騰」や「ヨンクル族(魂までかき集める人々=わずかな資産をかき集めて資産形成を狙う人々)量産」につながった不動産政策についても、「(高く)評価してもらわなければ」と言った。感謝しろという意味だ。

 文前大統領は、飼っていた豊山犬を飼育費支援問題で政府に返納したことについて、「(自身が)この6カ月間にわたり大統領記録物である伴侶動物を無償で育て、愛情を注いできたことについて、(人々は)むしろ感謝すべきだ」と言った。自身が飼っていた犬について、政府に「毎月250万ウォン(約26万円)の支援はできない」と言われるや、追いやった本人が「私に感謝しろ」と言ったのだ。犬を飼っている人々は犬に情が移って追いやることなどできないという。愛犬家のように見えていた文前大統領にそうした「情」はなさそうだ。そうした情はないものの、「私はみんなに感謝してもらうべきだ」という独特な感情はあるように見える。

ペ・ソンギュ論説委員

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