しかし、状況は共に民主党の希望通りには流れなかった。梨泰院雑踏事故の犠牲者リストを公開しようという同党の主張は、反対世論にぶつかって白紙になった。光化門のセウォル号天幕をまねた梨泰院追悼空間を、尹錫悦政権に突き付ける刃にしようとしていた構想に乱れが生じた。同党の李在明(イ・ジェミョン)代表は、大庄洞開発関連の不正疑惑で捜査を受けていた部下職員が極端な選択をすると、弔問はおろか「私と何の関係があるのか」と言った。出棺日にサンタの格好でダンスまでして、遺族の怒りを買った。そんな人々が主導する「梨泰院哀悼」に、どの国民が共感したいだろうか。
尹錫悦政権を手なずけようとした政治ストも、計画とは懸け離れた形で展開した。ソウルの光化門や汝矣島での街頭闘争を皮切りに、貨物連帯・地下鉄労組・鉄道労組・建設労組がリレー形式でストに入った時点では、今回もまた労組の勝利、政府の屈服で結論が出そうだった。しかし先鋒(せんぽう)に立っていた貨物連帯が、わずか半月ほどで白旗を挙げるような格好でストを取りやめた。尹錫悦政権が法と原則に基づいて厳正対応したこともあるが、韓国国民の世論がストに対してあまりにも冷たかった。自分たちだけで鉄壁の安定雇用を抱え込む民労総の既得権のせいで就業機会は「針の穴」と化しており、その狭き門の前で苦しむ若い世代が背を向けたのだ。ストの損失責任を労組に問うことができない「黄色の封筒法」で安全網を広げてやりたい、とする野党への視線も冷ややかだった。ポスト・コロナ経済危機を大統領と共に心配し、鉄道スト封鎖立法に賛同した米国の野党とはあまりにも対照的だった。
民主主義体制の政党は、自分たちのビジョンに基づいて国の繁栄を導くことが目標だ。その夢を実現しようと、熾烈(しれつ)な主権競争を繰り広げる。だが進歩(革新)の旗を振る韓国の野党は、ひたすら政権を取ることが目標だ。全国民をトラウマに陥らせたセウォル号沈没の悲劇、狂牛病デモのような国家的混乱までも手段にする。国の将来を売ってでも自分の腹を満たしたいという気持ちでいるのなら、それはもう政党ではなく亡国勢力と呼ぶべきだ。韓国国民も今や、彼らの正体に気付いた。共に民主党の「アゲイン・セウォル号、狂牛病」のあがきは、亡国左派の夢想に終わりつつある。
金昌均(キム・チャンギュン)論説委員