【コラム】「西朝鮮」になった国…「中国の夢」は実現しない

自由を抑圧し、市場を統制する全体主義国家は先進国になり得ない
韓国左派が賛同しようという「中国の夢」は決して実現し得ない

 習近平の統制経済の実情は、アリババの創業者、馬雲(ジャック・マー)の粛清に克明に現れた。中国式革新のアイコンだった彼は、共産党の「官治」を批判したという理由で会社の株式を手放し、経営から退いた。テンセント・滴滴出行・美団などのビッグデータ企業も続々と撤退を迎えた。権力に嫌われたからと一夜にして企業を奪われる国では、革新やクリエーティビティーが生き残ることはできない。「市場」より「マルクス」を優先する習近平の中国経済は、かつてのような活力を見せることはできないだろう。

 韓国左派が中国式国家モデルに憧憬(しょうけい)を抱いているというのは秘密ではない。進歩(革新勢力)を代表するという元大統領は「中国の夢に賛同したい」とも語った。しかし、人類の普遍的価値から逸脱し、奇形的な特殊国家へと変質したのが中国の実相だ。防疫を理由に都市全体を封鎖し、数千万人を何カ月も家に閉じ込めた。こんな専制統治が可能な国は、地球上で中国と北朝鮮だけだろう。およそ5億台に達する監視カメラとドローンで顔面認識・虹彩などの身体情報を収集し、14億の民の監視網を構築した。どこに行って誰と会ったか、私的な動線や社会的関係を追跡し、全人民の言動と善行・悪行の記録をビッグデータとして集積し、各個人に社会的信用等級を付与する計画まで進めている。

 絶望した中国ネットユーザーらは、自分の国を「西朝鮮」と呼ぶという。金正恩(キム・ジョンウン)王朝の北朝鮮のように、中国が「西方の朝鮮」になっていっているという自嘲的な表現だ。権力者のスキャンダルを暗示したスポーツスターが突如消息を絶ち、体制に批判的な人々が行方不明になる事件が日常化した。抑圧と監視、介入と統制、公権力独裁などで中国は北朝鮮に似てきている。北朝鮮がアナログ監視だとすると、中国は先端技術を総動員したデジタル監視国になった。

 習近平が語る「中国の夢」は、グローバル覇権国の夢だ。経済力・軍事力、文化とソフトパワーで米国を上回って「パックス・シニカ」の超大国になりたいというのだ。しかし市場を統制し、人権を押さえ付け、人民を監視し、思想を検閲する国は大国になれない。自由とクリエーティビティーを抑圧する全体主義の体制では、決して先進国の敷居を越えられない。習近平が「西朝鮮の皇帝」に座している限り、彼の夢は実現しないだろう。韓国左派が「賛同したい」という中国の夢は、ただの幻想だ。

朴正薫(パク・チョンフン)論説委員

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