12月22日、「万里の長城」東端にある河北省山海関。最近コロナが再び拡大したことで、レストランや土産物屋はほとんど営業していないが、薬局の前には早朝から客が長い列を作っていた。解熱剤を買おうと五つの薬局を回ったが、どこに行っても購入できなかった。ある薬剤師は「せき止めでも飲んでおきなさい」と言った。
12月7日から「ウィズ・コロナ」に切り替えた中国では、「薬荒(薬不足)」が大至急解決すべき課題に挙げられている。医療陣不足と発熱患者の激増により病院診療は極度に難しくなったが、解熱剤はもちろんせき止めの薬すら購入困難で、市民の不満は大きくなっている。新型コロナの確定患者が主に服用する解熱・消炎鎮痛剤「イブプロフェン」の世界最大の生産国にして輸出国の中国が、こんな事態に直面していることから、防疫緩和に向けた当局の準備がおろそかだったという指摘が集中している。
最近、中国で解熱剤は、薬局ではなく闇市場で買わねばならない貴重品になった。通常はウィーチャットなどSNS(交流サイト)を通して取引するが、定価の100倍を超える高額で売ってくるケースもある。新型コロナが急速に広がっている上海では、定価15元(現在のレートで約285円。以下同じ)の解熱剤が130倍以上の2000元(約3万8000円)で売られていた。浙江省温州市竜湾区の市場監督局は「ある薬剤師が、2.69元(約51円)で仕入れた100錠入りイブプロフェンを、パッケージを開けてばら売りする手法で107倍もの高額で販売したのを摘発した」と発表した。
12月18日、広東省珠海のある製薬工場前に市民数百人が列を作った。イブプロフェンを定価で購入しようとする人々だった。ある30代男性は「和睦、嘉会など大病院を回って新型コロナの治療薬を買っている」と語った。薬を略奪する事件もあちこちで起きている。12月21日、黒竜江省のある薬局が無料で解熱剤を配るイベントを行ったところ、乱入してきた住民によって薬を全て強奪された。