【寄稿】真っ白に燃え尽きた「SLAM DUNK」

 韓国のおじさんたちが熱く燃えている。韓国の劇場で上映中の日本のアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』の話だ。あなたが私のようなエックス世代(1960年代半ばー80年ごろ生まれ)のおじさんなら、既にこの映画を予約したことだろう。そうに違いない。1990年代の子どもたちは、ほとんどみんな『SLAM DUNK(スラムダンク)』を読んだ。私は、このコラムで『SLAM DUNK』がどういう漫画なのか説明する必要もないと信じている。既に『SLAM DUNK』は、日本の漫画でありながら韓国の特定世代の魂を支配する、象徴的な文化商品になった。

【写真】『THE FIRST SLAM DUNK』、公開から2週間で100万人突破

 われわれの世代には、各自の『SLAM DUNK』があった。背の低い私は高校時代、ソン・テソプ(宮城リョータ)に最もハマった。身長160センチ台でも長身メンバーに負けない気概が好きだった。無口でナルシシズムが強いあなたは、ソ・テウン(流川楓)を選ぶだろう。それでも主人公が一番好きなあなたは、カン・ベクホ(桜木花道)だろう。性別も関係ない。『SLAM DUNK』を読んでそれぞれキャラクターに自分を投影していた女性も、私は大勢知っている。彼女たちがマネジャーしか選ばないはずと思っているあなたこそ、性差別主義者だ。

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』は、韓国で公開が始まってからわずか1週間で55万人の観客を呼び込んだ。じわじわと力を失いつつある『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を脅かしている。ソーシャルメディアに上がってくる反応を見るに、再鑑賞も続いていくだろう。子どもと見に行ったという報告も相次いでいる。製作会社の東映は、なんと新しい世代の「金脈」、いや観客層をつくり出しているのだ。

 これは、どこから来たブームなのだろうか。この30年間、熱狂に値するものを新たに見いだすことができなかった、おじさんたちの購買力? 実のところ私は『THE FIRST SLAM DUNK』を見ながら、2023年にリバイバルするにはいささか古い話だと思った。けがをしていても「オヤジの栄光時代はいつだよ…全日本の時か? オレは…オレは今なんだよ!」と言ってコートに出ていく主人公。彼のけがを知りながらも送り出し「指導者失格です」とつぶやくアン・ハンス監督(安西先生)。これは明白な選手虐待だ。

 このごろは、こういう話を誰も書かない。負傷を知りながらも試合に送り出す指導者を称賛していた時代も過ぎ去った。しかもメインキャラの一人は、考えてみると校内暴力の犯罪者ではないか。だが私は、その政治的に不公正な世界をあらためて鑑賞しながら、涙があふれそうだった。あのころは熱血があった。心に望む何かのために、命の一瞬を真っ白に燃やす人間たちの世界のことだ。それが、数十万人のおじさん、おばさんに再び「庶民シュート」のまねをさせ、号泣しそうにさせたのだろう。

 予告するなら、2023年を最も熱く燃やす流行語の一つは「ヌカルヒョプ」だ。これは、「誰かがナイフを持って脅迫でもしたのか?」を略した言葉だ。その通り。誰かがナイフを持って脅迫でもしないかぎり、あなたは熱血する必要がない。自分の仕事だけをやろうという「静かな退職(Quiet quitting)」の時代だ。だが全てが守りに入っていく時代に、私は依然、熱血をもうちょっと見たい。「オレはあきらめの悪い男」という、「炎の男」チョン・デマン(三井寿)のせりふを見たい。ただし老婆心で付け加えるならば、このせりふ、デートの申し込みを拒絶されたあなたに使えと言っているわけではない。拒絶を前にしてもなお「オレはあきらめの悪い男」と言ったら、それはストーカーだ。

キム・ドフン(文化コラムニスト)

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