「パキロビッドを買ってきて、6000元払うから」…最高の帰省土産、春節連休の中国で争奪戦

死亡者急増で新型コロナ治療薬が品薄に
「お年寄りに最高の旧正月の帰省土産」

 「新型コロナウイルス感染症治療薬『パキロビッド』を手に入れてくれたら6000元(約12万円)払う」

 「15日に北京を出発して出張で台湾に行った」と中国のメッセージ・アプリ「ウィーチャット(微信)」のチャットルームに投稿したところ、中国人の知人Aさんから上の通りの依頼があった。パキロビッドの中国公式価格は2300元(約4万4000円)だが、その3倍近い価格で買いたいということだ。ほかの知人たちも先を争うように同様の依頼をしてきた。 依頼はすべて丁重にお断りした。

 今月に入って中国で新型コロナの感染が拡大して死亡者が急増すると、パキロビッドの海外購入代行や闇取引を依頼するケースが増えている。北京のある会社経営者は「春節(中国の旧正月)を迎えて3年ぶりに帰郷する中国人たちは両親や祖父母への土産物としてパキロビッドを買い占めている。1箱の価格は一時1万4000元(約27万円)まで跳ね上がった」「中国人はパキロビッドを高齢の家族を救う生命線だと考えている」「10万元(約200万円)払って9箱確保した」「一部は取引先に贈り物として渡した」と語った。

 パキロビッドは米製薬会社ファイザーが作った「飲む新型コロナ治療薬(経口抗ウイルス薬)」で、入院と死亡の予防効果が88%に達するとされる。中国本土でも新型コロナにかかった基礎疾患者や高齢者が処方を受けて服用することができるが、流通量が少ないのにもかかわらず需要が高まっているため、海外で調達するケースが増えている。

 パキロビッドの価格が急騰するほど、中国では春節をきっかけに新型コロナが急速に広がっている。先月7日の防疫措置緩和以降、初めて迎えた春節連休期間に中国人は大移動した。春運(春節特別運送期間=1月7日から2月15日まで)が始まってから、春節(旧暦一月一日)前日の21日までで鉄道輸送累計人員が1億9543万人となり、前年同期比で27.3%増加した。新型コロナ感染を避けるため、公共交通機関ではなく乗用車で帰省する人も多かった。7日から18日までの高速道路累計通行乗用車は3億2000万台で、前年同期比12.7%増だった。2019年との比較では11.8%増だ。中国交通運輸省は今年の春運期間(40日間)に20億9500万人が移動すると予想した。これは昨年より99.5%の増加だ。中国メディアはまた、今回の連休期間中の映画興行収入が90億元(約1730億円)を超えると期待している。昨年は61億元(約1170億円)だった。

 こうした中、「中国の新型コロナ感染者数は11億人だ」という政府防疫専門家の発言が飛び出して注目されている。中国疾病予防統制センターの感染病学首席専門家ウ・ジュンユ氏は21日、中国のSNS「ウェイボー(微博)」に「人口の約80%が既に感染している」と投稿した。同氏が所属する疾病予防統制センターは中国防疫当局の国家衛生健康委員会の傘下機関だ。中国国家統計局が集計した中国の人口(約14億1175万人)を基に計算すれば11億2940万人が感染したということになる。これに0.1-0.2%前後と言われるオミクロン株系列の致死率を当てはめれば、推定で少なくとも110万人が死亡した可能性がある。

 中国で新型コロナ治療薬の入手が困難になっていることから、香港では最近、医薬品の密輸摘発件数が増えている。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、香港税関当局では先月1日から今月12日までの6週間で1000万香港ドル(約1億6600万円)以上の規制薬物を押収したが、そのうち相当数が中国本土向けのパキロビッドやプリモビル(パキロビッドのジェネリック医薬品)などだったということだ。

北京=イ・ボルチャン特派員

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