昨年10月に習近平国家主席の3期目が始まると、香港の証券市場は暴落した。習主席の長期政権がもたらすであろう暗雲が濃く見えた。だがそのとき、中国経済を30年間研究してきた韓国金融研究院の池晩洙(チ・マンス)博士の展望は少し違っていた。「今後2-3年を見れば、中国の経済環境は良いです。コロナ封鎖令を解けば、底から出発するのでじわじわ上がっていけるという計算をしたのでしょう」
3カ月が過ぎてみると、池博士が見込んだ通りに進んでいる。封鎖令をなくすなり、「リオープニング(reopening)」の期待が膨らんだ。昨年は3%の成長率にとどまった中国経済が、今年はバネが跳ね返るように反騰するという予想は多い。今年の中国の成長率見込み値について、今月に入ってゴールドマン・サックスは5.2%から5.7%へ、モルガン・スタンレーは5.4%から5.7%へ、それぞれ引き上げた。
昨年の中国は、大飢饉(ききん)が強打した1961年以来となる人口減少を経験した。もはや「若い中国」ではない。人口が停滞しているときに人為的に浮揚させるとバブルばかり大きくなることを懸念し、中国は不動産依存度を低くする方向へと成長方式を変えつつある-と、英国紙「エコノミスト」傘下の研究機関EIUが分析した。既に中国は不動産投資を昨年より10%減らした。
その代わりに、一時締め付けていたIT産業について規制を緩和しようとする動きがある。これまで国営企業だけが享受していた土地・金融面での恩恵を海外企業にも開き、投資の誘致を増やすという青写真も打ち出した。かつての快速成長は難しいが、人口減少と成長率減速の時代において、軟着陸するための新たな成長公式を編んでいる。映画のセリフのように、「中国にはまだ計画があるのだな」という印象を与える。
問題は韓国だ。中国経済が反騰するということで韓国も自動的にその恩恵にあずかることができた時代は過ぎ去った。韓国企業の中国向け輸出は、消費財は少なく、中間財の比率が90%を超える。中国人が報復消費に没頭しても、その温もりを得るのは難しい。
昨年、韓国が最も多くの貿易黒字をあげた国はベトナムで、最大の貿易相手国である中国は黒字の規模で22位にすぎなかった。コロナ封鎖令の影響が大きかったとはいうものの、2018年の時点で中国が黒字規模1位の相手国だったことを考慮すると、地軸が揺らぐほどの変化だ。ベトナムが「上りつつある星」なのは間違いなく、貿易相手を多様化するのは良い。だが、人口が中国の河南省ほどでしかないベトナムが「ネクスト・チャイナ」になり得るかどうかは、様子見する必要がある。
今は「ピーク・チャイナ(Peak China. 中国の成長の勢いが頂点に達し、下り坂が始まる現象)時代を迎え、以前とは次元の異なる対外ビジョンが必要な時期だ。だが依然として「中国依存度を減らすべき」だとか「中国との技術格差を維持すべき」といった、古い格言のようなスローガンにとどまっている。図体の大きな中国が変身するのにもついて行けないのではないか、という不安感が強まっている。新しく、精密な対外戦略を打ち立てるべきときだ。
孫振碩(ソン・ジンソク)記者