【コラム】「中国恐怖症」に陥る韓国の外交官

 韓国の外交官らが最も好む勤務地の一つが米国だ。その米国所在のある在外公館を複数人が志望し、競合したことがあった。こういう場合、事前に意向を調整するのが最も望ましいが、思った通りにならない場合は人事委員会が開かれ、投票で派遣者を選ぶことになる。人気の公館だけに、落選した場合は「危険な地域」へ行くことになる不利益を甘受するのが志望者の務め。そんな中で最近、落選した外交官が行くことになる場所は中国のどの公館かというのが、韓国外交部(省に相当)内外でちょっとした話題になっている。10年前には誰もが行きたいと手を挙げていた中国の立ち位置が、今ではこれほどまで落ちたのだ。

 先の事例は、このところ韓国外交部に蔓延している中国忌避、もしくは「チャイナ・フォビア(中国恐怖症)」を示す氷山の一角にすぎない。「選抜」されるのが怖くて、中国語が巧みだったり中国研修に行ったことがあったりという事実を言わない人が無数におり、若い事務官を中国に派遣しようとしたら「いっそ休職する」という脅しを聞くことになった-という怪談まで出回っている。THAAD(高高度防衛ミサイル)問題のように中国が腕力を見せつける度に反中感情が高まり、対中外交の難しさが強まることが主な原因だ。また、パンデミックの期間に見られた中国当局の非科学的防疫などの問題もあり、生活環境に対する魅力度は昔ほどではない。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の対中外交は「相互尊重」に要約される。「一人飯」や、随行の記者が暴行されても「中国は高い峰」と言っていた前政権の低姿勢外交から抜け出し、言うべきことは言うというわけだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が任期中に骨を折ってきた、習近平国家主席の訪韓(2014年が最後)にしても、「今度は中国が来る番」という立場を堅持している。保守・進歩(革新)を問わず、こういう姿勢が「爽快」だという人は少なくない。

 だが、中国をきちんと理解した上で堂々としていることと、知らぬまま堂々としているように見えることとは違う。尹錫悦政権の外交・安全保障ラインにおいて、「中国通」と言える人物は数えるほどしかいない。竜山は米国通でいっぱいで、外交部の長官・次官はいずれも中国とはいささか距離のある人物だ。盛んに中国を学び、悩まされつつも「関係」(グアンシー。人脈・人的ネットワーク)を作らねばならない「チャイナ・スクール」(外交部の中国ライン)の芽まで摘んでしまって、韓国は果たして中国にまともに対処できるのかという疑問は強まっている。

 中国を「この10年で最高の挑戦者、かつ世界唯一の競争者」と規定した米国は、戦列を整えつつある。国務省では、いわゆる「チャイナ・ハウス」と呼ばれる中国調整室が新設されて情報を共有し、省庁間の対中政策を調整するコントロールタワーとして位置付けられた。連邦議会でも「米国と中国共産党の競争に関する特別委員会」が立ち上げられ、同様の機関の設立は続くものとみられる。競争するにせよ協力するにせよ、それだけ中国をきちんと理解しようという超党派的コンセンサスがあるからだ。韓国も、手遅れになる前に、中国の「戦狼」外交に立ち向かって国益を守るチャイナ・スクールの再建を議論すべき時期が来た。

キム・ウンジュン記者

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  • ▲韓国の尹錫悦大統領(写真左)と中国の習近平国家主席。/写真=韓国大統領室提供

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