中国、衛星でも監視可能なのに…米国に「偵察気球」飛ばした理由は? 気球の軍事使用はかつての日本でも

 米国が撃墜した中国の偵察気球は深刻な軍事的脅威ではないが、米政府と国民に不安感を与え圧力をかける意図が強いと分析されている。

 中国の偵察気球はバス3台ほどの大きさで小型モーターとプロペラで動き、搭載された装備には各種センサーなど通常気象観測や民間研究では使われていないものも含まれているという。今回米本土を横断した偵察気球は高度18-20キロを飛行したが、偵察衛星の高度(数百キロ)よりもはるかに低く、鮮明な写真を撮るのに有利だ。

 しかし、中国も数百キロ上空から10センチ余りの物体を識別できる偵察衛星を運用中とされ、現実的に偵察気球が偵察衛星よりも高い解像度の写真を撮る可能性は低い。米モンタナ州の大陸間弾道ミサイル(ICBM)基地上空などに偵察衛星よりも長時間滞留して写真を撮ることができるメリットはあるが、これも気流の影響をある程度受けるため、正確度が低下する可能性がある。経済誌エコノミストは、気球が地上近くで米国のインフラ関連情報を収集したり、米通信システムの低周波信号を傍受したりした可能性もあると分析した。

 結局、中国の狙いは強硬な対応が難しい「グレーゾーン戦術」で米国の政府と国民に圧力を加える「認知戦」の一環ではないかと分析されている。峨山政策研究院のヤン・ウク研究委員は「偵察気球が米本土を横断したことで、本土だからといって安全というわけではないというメッセージを米国に伝えるのが中国の目的ではないか」とし、「米国の『航行の自由作戦』をけん制する意図もありそうだ」と指摘した。 中国が「気象観測用民間気球」と主張したことも、軍事的な強硬対応を難しくするためのグレーゾーン戦術というわけだ。シンガポール南洋理工大学ラジャラトナム国際関係スクール(RSIS)のコーディネーター、ベンジャミン・ホー氏はBBCの取材に対し、「何であれ情報を得たかったのだとすれば、もっと良い方法がある。気球は米国に送るシグナルであり、米国がどう対応するかを試したものだ」と分析した。

 気球の軍事使用には長い歴史がある。第2次世界大戦当時、日本が米本土に飛ばした風船爆弾が代表的だ。日本は1944年11月から1945年3月まで9000個以上の風船爆弾を米国に飛ばしたが、実際に米本土に到着したのは1000個未満と推定される。ほとんど効果がなかったが、1945年に風船一つが米オレゴン州に落下し、民間人6人が死亡した。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲米F-22ステルス戦闘機の空対空ミサイルによる攻撃で爆発する中国の偵察気球/4日、聯合ニュース
  • ▲米サウスカロライナ州サーフサイドビーチ上空で米戦闘機が中国の偵察気球を撃墜した後、飛行している。/4日、聯合ニュース

right

あわせて読みたい