韓国で最近浮上している「満65歳以上の高齢者の地下鉄無料乗車」問題について、外信各社は「韓国の頭痛の種」と表現した。そして、この問題は財政および社会的議論の対象であるだけでなく、政治的な計算とも絡み合っており、解決は容易でないと分析した。与党・国民の力の中心的支持層には高齢の有権者が含まれているため、関連問題で思い切った判断をするのは容易でないということだ。
英ロイター通信は16日、「韓国の高齢者無料乗車が政治的な頭痛の種となっている」という見出しで、これに関連する問題を詳しく報道した。同通信は「地下鉄無料乗車は過去40年間にわたり、韓国全土で65歳以上の高齢者が享受してきた恩恵で、高齢者の活動の維持に寄与してきたと言われている」「しかし、今は急速な高齢化と地下鉄運営経費の急増により、政治的にデリケートな問題になっている。高齢者の地下鉄無料乗車問題はアジア第4位という規模の経済大国でありながら、高齢者福祉費用が急増している韓国の広範な課題の一つだ」と取り上げた。
韓国では現在、この問題を解決するため、無料で地下鉄を利用できる高齢者の年齢を引き上げる案が有力視されている。大邱広域市と大田広域市では無料乗車の年齢を段階的に引き上げる案を検討すると発表した。同通信はこうした事実を紹介した上で、「韓国ギャラップ社の世論調査で韓国人の60%が高齢者の無料乗車最低年齢を70歳に引き上げることに賛成しているという結果が出た」と報道した。
同通信は「現在60歳の定年年齢を引き延ばす案や、国民年金の持続性を保障する案をめぐって議論が行われる過程でこの問題が浮上した」と説明している。そして、それと共に「尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は苦しい立場に追い込まれている」「昨年5月の就任時は財政健全化を公約したものの、支持層の中核を高齢の有権者が成しているためだ」と伝えた。さらに、「国民の力議員の一部は『来年の総選挙の助けにならない』と警告している」「無料乗車問題は時間が経つほど悪化するばかりだ」とも報じた。
一方、16日に開催された「老人無料輸送政策討論会」で、呉世勲(オ・セフン)ソウル市長は「韓国が急激に高齢社会になるにつれ、無料乗車による赤字規模が大きくなっている」「今は都市鉄道無料輸送制度に対する、より根本的な検討が必要だというのが多くの方々の指摘だ」 と述べた。その上で、「今の世代が責任を取るのを先送りすれば、若者たちや将来の世代に耐えきれないほどの負担が加わるだろうから、今から議論を始めるべきだ」と話した。
だが、大韓老人会のキム・ホイル中央会長は「昼間に空席が多い時、その席に高齢者が乗ったからと言って余計に金がかかったり、電気代が増えたりするだろうか」「地下鉄には障害者も(無料で)乗るし、小さい子どもも(割引運賃で)乗るのに、誰が『高齢者のせいで赤字が出る』と言っているのか。罰当たりではないか」と述べた。そして、「地下鉄の赤字は国が補てんすべきだ」と語り、政府財政支援の代案として取りざたされている「高齢者無料乗車年齢引き上げ」に反対であるとの見解を示した。
パク・ソンミン記者