昨年12月13日、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)はツイッターに熊本県のある小学校を訪問した写真とともに「ソニーは世界最高のカメラセンサーを作ってきたアップルのパートナー」だと投稿した。熊本は台湾積体電路製造(TSMC)とソニーが共同で建設するファウンドリー(半導体受託生産)工場の予定地であり、TSMCはそこでイメージセンサー世界最大手であるソニーの製品を生産するとみられる。イメージセンサーは世界シェア2位のサムスンが特に力を入れている分野で、米国(アップル)と日本(ソニー)、台湾(TSMC)が協力してサムスンをけん制する構図だ。
昨年12月6日、TSMCの米アリゾナ工場への設備搬入式も台湾と米国の技術同盟をアピールする場だった。会場にはバイデン米大統領をはじめ、米国政官界幹部のほか、アップルのクックCEO、エヌビディアのジェンスン・フアンCEO、AMDのリサ・スーCEOなど米国の主なテクノロジー企業のトップが勢ぞろいした。半導体業界幹部は「ペロシ前米下院議長が昨年8月に台湾を訪問し、TSMCの劉徳音(マーク・リュウ)董事長(会長)に会ったことも、TSMCが米国の技術安全保障で占める地位を示している」と指摘した。
米国、台湾、日本の「半導体同盟」がますます強固になる中で、韓国が居場所を失っているという指摘がある。台湾は2021年、米国、日本と半導体分野で協力をすると宣言し、日米も昨年、半導体技術同盟を結んだ。米国は半導体サプライチェーン再編のために韓国、台湾、日本と共に「チップ4」を掲げたが、その中で韓国は積極的な動きを示せずにいる。
専門家は米国、台湾、日本が形成する半導体バリューチェーンで韓国の役割は中途半端だと話す。米国は半導体設計、日本は設備、台湾は最先端の受託生産で強みを持つが、韓国は違うからだ。半導体専門家である成均館大学のクォン·ソクチュン教授は「ファウンドリーよりもメモリー半導体で優位にあるサムスン電子は米国、台湾、日本の半導体サプライチェーンの結び付きに食い込む隙間が見えない」と話した。
アップルのクックCEOが訪れた熊本は、TSMCとソニーが手を携え、昨年から半導体工場を建設している地域だ。TSMCとソニーはそれぞれ70億ドル、5億ドルを投資し、熊本工場の運営主体である「JASM」を合弁で設立し、ソニーは合弁会社の株式20%を保有する。 熊本工場では最新鋭工程ではない12ー28ナノメートル製造プロセスの半導体製品を生産する。ソニーの主力製品であるカメラ用イメージセンサーや車両制御半導体マイクロコントローラーユニット(MCU)が対象となる見通しだ。
TSMCは米日との同盟体制強化に総力を挙げている。中国と安全保障面で対立する米国、日本との三角体制構築を通じ、世界シェアと影響力を拡大する狙いだ。アップル、グーグル、エヌビディアなど米国のビッグテック企業と日本の素材・部品・装備企業の競争力にTSMCの半導体生産技術を融合し、韓国との格差をさらに広げようとしている。一方、サムスン電子とSKハイニックスはメモリー半導体の主な生産拠点を中国に置いている上、中国での販売割合が高く、反中同盟に加わることは容易ではない。サムスン電子はNAND型フラッシュメモリーの30-40%を中国・西安で、SKハイニックスはDRAMの半分ほどを中国・無錫で生産している。
ピョン・ヒウォン記者