台湾TSMC、アップル・ソニーと組んでサムスンをけん制(下)

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■IT復活を夢見る日本のバックに台湾がいる

 TSMCが日本に工場を建設するのは、サムスンをけん制する狙いのほか、電気自動車(EV)の登場で爆発的に成長する車載半導体市場を掌握するという多目的の布石だ。日本には世界最大の自動車メーカー、トヨタ以外にも日産、ホンダなど納入先が十分にあり、車載半導体ではルネサス以外にこれといったライバルがいない。TSMCは日本との同盟を通じ、一気に市場を掌握できる。熊本工場には世界的な自動車部品メーカーであるデンソーも400億円を出資し、10%以上の株式を取得した。日本が誇る素材・設備メーカーとの絆も一層強まりそうだ。

 日本は2000年代に入り、半導体、スマートフォンなど中核IT産業でサムスンに相次いで敗れたが、TSMCとの協力を機に復活を夢見ている。萩生田光一経済産業相は昨年、米国を訪問し、レモンド商務長官から半導体分野での協力推進の約束を取り付けた。それをきっかけとして、昨年12月にはIBMと日本の半導体企業ラピダスが2027年までに2ナノメートル製造プロセスを開発するために提携した。TSMC工場の日本誘致にも政府がかなりの役割を果たした。日本政府はTSMCが茨城県に半導体研究開発拠点を設置するのに必要な370億円の半分を負担した。また、TSMCとソニーの半導体工場建設費用の40%に当たる4000億円も補助金として支援する。先端半導体工場を主に韓国国内に建設するサムスン電子は、許認可や補助金などの競争で不利な立場に置かれている。

■TSMCの対米投資規模、サムスンの2倍

 TSMCは先月、米国への投資規模を当初計画の3倍以上の400億ドルにまで拡大すると発表した。サムスン電子が米テキサス州テイラーに建設する半導体工場への投資額(170億ドル)の2倍を超える金額だ。TSMCの重要顧客であるアップル、エヌビディア、AMDなどファブレス(半導体設計)大手はTSMCによる米国での半導体生産を歓迎している。これを契機にTSMCとサムスンのシェア格差はさらに拡大しかねない。

 世界10大ファブレス企業のうち7社がある米国は、TSMCの工場を自国に誘致する一方、日本との協力で半導体製造設備と重要素材を安定的に確保することで、国際情勢で揺らぐことがない強固な「半導体サプライチェーン」を構築中だ。

 専門家はTSMCが米中に挟まれた最悪の状況にあるにもかかわらず、むしろ地政学的危機を利用して実益を得ていると分析する。米国、日本に工場を建て、中国による攻撃リスクを分散させ、安定したサプライチェーンを構築し、日米でさらに顧客も確保している。エコノミストは「半導体需要が増え、今後台湾内の生産設備と人材ではそれに応じきれないだろう。米日政府の支援を受け、将来の工場と人材をあらかじめ確保した格好だ」と分析した。

ピョン・ヒウォン記者

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