2019年11月、韓国軍が脱北漁民2人を東海の海上で拿捕する前日の段階で、文在寅(ムン・ジェイン)政権の高官らが送還を協議していたことが検察の捜査で判明した。鄭義溶(チョン・ウィヨン)元青瓦台国家安保室長らの起訴状に盛り込まれていることが9日までに確認された。
文在寅前大統領は当時、釜山で開催される韓国・ASEAN首脳会議に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を招待する親書を送る準備をしていた。検察は文在寅政権が「北朝鮮を尊重する」という意思を示すため、北朝鮮漁民の拿捕から送還までを事前に計画していたとみている。当時国家情報院と青瓦台、統一部の実務担当者は「強制送還する法的根拠がない」と主張したが、黙殺されたという。
訴状によると、青瓦台国家安保室と国家情報院は2019年10月29日、北朝鮮漁民2人が南側に逃走中だという軍の情報を受けた。30日の情報には、2人が仲間の漁船員を殺害したという内容も含まれている。韓国軍は31日、北方限界線(NLL)を越境した北朝鮮漁民を退去させた。国家安保室は当時、北朝鮮の船舶・人員がNLLを越えた場合、退去と現場での送還を原則とするマニュアルを作成していた。
ところが、国家安保室は31日に拿捕の方針を決め、11月1日に北朝鮮漁民がNLLを再び越境してきた際、拿捕を承認したという。鄭元室長と徐薫(ソ・フン)元国家情報院長が「文大統領の親書を北朝鮮に渡すのに合わせ、北朝鮮の漁民を送還しよう」と申し合わせたというのが検察の捜査結果だ。軍は11月2日、北朝鮮漁民を東海の海上で拿捕した。文在寅政権は2人が「亡命意思」を表明したにもかかわらず、11月7日に板門店経由で強制送還した。文大統領の親書は統一部が北朝鮮側に強制送還を通知した同月5日、北朝鮮側に渡された。
徐薫元国家情報院長は、同院の第3次長が「実務担当部署が2度も(取り調べ中断に)反対している」と報告したが、黙殺していた。青瓦台法務秘書官も「法的根拠がない」と報告したが、当時の盧英敏(ノ・ヨンミン)大統領秘書室長は11月4日、青瓦台で会議を開き、「送還が可能だ」との認識を示し、金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一部長官は「青瓦台での会議結果に同意する」との立場を伝えたという。
キム・ジョンファン記者