最近世界の半導体製造設備市場では中古品の価格が新品水準に値上がりしているそうです。売り物さえ出れば、中国企業が価格不問で買い取るため、そんな現象が起きているというのです。
2月に入り、全世界の目は米国による中国偵察気球撃墜に集中していますが、中国産業界にとっては米国、日本、オランダの3カ国が半導体製造設備の対中輸出規制で合意したことこそが尻に火がつくほど深刻な問題なのです。
米商務省は昨年10月、14ナノメートル以下の先端半導体を生産するのに必要な製造設備の対中輸出を禁じました。それに日本とオランダも同調しました。3カ国は世界の半導体製造設備市場でシェア90%以上を占めています。事実上、中国の半導体産業を封鎖したことになります。今回の制裁で中国半導体産業が世界レベルに追い付くのに20年以上かかるとの分析が示されています。そのため、制裁が本格化する前に関連設備を一つでも多く買おうと、中古設備の買い占めが起きているのです。
■米国に続き、欧日も門戸閉ざす
3カ国は数カ月の協議を経て、1月末に半導体製造設備の対中輸出規制で合意しました。具体的な内容はまだ公表されていませんが、専門家は昨年10月に米国が打ち出した制裁が基準になるとみています。米国は14ナノメートル以下のロジックIC、18ナノメートル以下のDRAM、128段以上のNAND型フラッシュメモリーの生産に使われる設備と資材の輸出を禁止しました。
半導体は薄いシリコンウエハーの上にナノ単位の微細な回路を刻んで作ります。不純物が付着しないように表面を洗い、真空状態で蒸気状の金属化合物や感光剤をコーティングしてから、その表面に光を当てて回路を描く数百の複雑な工程があります。洗浄、蒸着、エッチング、イオン注入、露光などと呼ばれる一連の工程には多くの先端設備が必要となりますが、90%以上を3カ国が供給しています。
2019年から米国による半導体制裁が本格化し、中国は半導体関連の設備・素材確保で困難に直面してきました。しかし、日本や欧州はまだ門戸を開いていて、それでも抜け道はありました。今回の制裁で最後のドアさえ閉まってしまったのです。
■「石器時代」に回帰する中国半導体
最も重要な設備は光でウエハーの表面に回路を描く露光装置です。7ナノメートル以下の微細工程による製品を生産するには、オランダのASMLが供給する極端紫外線(EUV)露光装置が必須です。サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長が随時ASMLの最高経営責任者(CEO)に会い、関係を深めるのも、その設備が重要だからです。
EUVの前段階の製品である深紫外線(DUV)露光装置も依然として多く使われていますが、DUVでも一部の最新設備は14ナノメートル半導体まで生産が可能だそうです。今回の合意ではその最新DUV機種も輸出禁止品目に含まれるということです。