【3月30日付社説】歌手の公演問題で国家安保室長まで交代するのは行き過ぎではないか

 辞任説が浮上していた韓国大統領室の金聖翰(キム・ソンハン)国家安保室長が29日に最終的に辞任した。金室長は「私による問題がこれ以上外交や国政運営に負担になってほしくない」として辞任を決め、後任には趙太庸(チョ・テヨン)駐米大使が内定した。

 ここ3週間でこれまで尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を支えてきた大統領室の金一範(キム・イルボム)儀典秘書官と李文熙(イ・ムンヒ)外交秘書官が相次いで辞任し、さらに国家安保室長まで立て続けに辞任するのは過去に例を見いだしがたいほど異例だ。全世界に散らばる166人の在外公館長がソウルに集まり、会議を行っている途中に国家安保室長が交代するという前代未聞の事態となった。

 これまで伝えられた内容によると、金室長は来月予定されている韓米首脳会談関連で米国が提案した歌手の公演について必要な時に尹大統領に報告せず、今回その責任を取ったという。歌手の公演とはいっても首脳会談における両国の親善に向けた重要イベントになるだろう。米国からの提案を直ちに大統領に報告できなかった責任は決して小さくはない。

 しかしこの程度の問題は実務責任者である外交・儀典秘書官が責任を取って決着をつけるのが一般的だ。その程度でも他の担当者には十分な警告になるだろう。大統領室国家安保室長はこれよりもさらに重要な外交・安全保障上の懸案に責任を持つ国の司令塔だ。外交・安全保障の総責任者が歌手の公演問題の扱いを誤ったという理由で更迭されるような国が他にあるのか疑問だ。何事も過ぎたるは及ばざるがごとしだ。歌手の公演問題の他に安保室内部のあつれきを辞任の原因とする見方もある。そこに今回の報告問題が重なったというのだ。

 今は米中の新冷戦とロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮の核実験など安全保障面で非常に不安な時期だ。世界的な銀行が破綻のリスクにさらされるなど、経済危機も非常に流動的だ。このような時に国家安保室が揺らいでいるようでは困る。幸い国家安保室長に新たに就任する趙太庸大使は老練な外交官として定評がある人物だ。来月の韓米首脳会談、5月の韓米日3カ国首脳会議に向けしっかりと準備してもらいたい。

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  • ▲韓国大統領室の金聖翰(キム・ソンハン)国家安保室長/NEWSIS

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