共に民主党が2021年に開いた党大会での「現金入り封筒疑惑」の中心人物である尹官石(ユン・グァンソク)国会議員と李ジョン根(イ・ジョングン)元事務副総長は、党大会で党代表に宋永吉(ソン・ヨンギル)氏が選出された直後、党の要職に相次いで任命された。民主党関係者によると、国会議員ではない李氏の事務副総長任命には党内で反対の声が上がったが、宋元代表が押し切ったという。民主党内では「党大会での功績がそれだけ大きかったことを示しているのではないか。現在明らかになってきている状況を見ると、功績というのは『現金入り封筒』のことだったようだ」との声が聞かれる。
宋元代表は2021年5月2日、党大会を半月後に控え、党代表選への出馬を公式に宣言した。16年、18年に続く3度目の挑戦だった。ある再選議員は「当時宋陣営は他の陣営と比べ物にならないほど追い込まれていた」と話した。党代表の座は宋元代表と洪永杓(ホン・ヨンピョ)、禹元植(ウ・ウォンシク)の両国会議員による三つ巴の争いとなった。当選回数では宋元代表が5回で、4回の洪、禹議員をリードしていたが、党内主流派だった親文在寅(ムン・ジェイン)勢力の支援を受けた洪議員、党内派閥である「経済民主化と平和統一のための国民連帯(民平連)」「ザ未来」に所属する禹議員に比べ、党内基盤は弱いと評されていた。
そうした状況で「現金入り封筒」が登場した。今回の捜査のきっかけとなった李元事務副総長の通話録音には、党大会を1週間後に控えた4月25日、姜来求(カン・レグ)韓国水資源公社常任監査委員が李元事務副総長に対し、「尹官石氏が金銭を要求したら、1000万ウォン(約102万円)を渡してほしい」と話す部分がある。2日後には「夕食の時間に(尹議員から)電話が来るだろうから、(封筒)10枚を渡してほしい」と告げている。李元事務副総長は同日、尹議員との通話で、「どこにいらっしゃいますか。ちょっとお会いしなければならないので」と尋ね、姜氏には「尹官石氏ときょう会い、それ(カネ)を渡した。封筒10枚を用意した」と語った。民主党関係者は「宋陣営で姜氏が院外、尹議員が院内を担当したと聞いている」と話した。
尹議員が現金入り封筒を他の議員に渡したとみられるのは4月27、28日だ。李元事務副総長は28日、尹議員との電話で、「兄さん、湖南(全羅道)は(根回し)しなきゃだめだ」と語っている。尹議員は「○○は(封筒を)渡そうとしなかったが、相手が『兄さん、どうせならついでに私たちにもください』と言うので、そこで3枚取られた」と答えている。当初現金入り封筒を渡すはずだった人物以外にも封筒を渡したと推定される内容だ。
宋元代表は党大会で議員・権利党員による投票と党員・国民に対する世論調査を合算した結果、得票率35.60%で当選した。2位の洪議員の得票率(35.01%)とはわずか0.59ポイント差だった。宋元代表は権利党員による投票と世論調査で洪議員に及ばなかったが、最も大きな割合(45%)を占める議員投票でトップになった。ベテラン議員は「現金入り封筒がなかったならば、結果がどうなったかは誰も分からない」と話した。
宋元代表は党大会の2日後、党の資金と組織を統括する事務総長に尹議員を任命した。約1カ月後には李氏を次期事務副総長に任命した。李氏を事務副総長に任命する際には、党内の反発も大きかったという。宋元代表が個人的に親交がある李氏を事務副総長にしようとしているとの反対論があったが、宋元代表は党代表の権限で任命を強行した。民主党の主要関係者は「民主党に出回っている『現金入り封筒リスト』には、当時宋元代表が党内要職に起用した現役議員がかなり含まれている」と話した。
宋元代表は党大会当時の大統領選候補のうち李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事と近いとされていた。宋元代表は「無派閥」を自称し、党内主流派の親文在寅勢力と対立したが、李知事も親文在寅勢力とは疎遠だった。党大会後、大統領候補の擁立過程では、宋元代表が李知事を支援するという意味の「李心宋心」という言葉まで登場しており、非李在明系は「宋永吉が党内選挙で偏向した管理を行っている」と批判した。
宋元代表は昨年3月、民主党が大統領選で敗北すると引責辞任した。だが、1カ月後には6月のソウル市長選出馬を宣言した。宋元代表がソウル市長に出馬して空席になった選挙区(仁川桂陽乙)の国会議員補選には李在明代表が戦略的に公認を受けた。宋元代表はソウル市長選で落選したが、李元代表は当選し、その後8月に行われた党代表選で当選した。民主党のベテラン議員は「意図したか否かにかかわらず、現在の『李在明代表体制』に至る過程で宋元代表が決定的な役割を果たした」とし、「李代表も今回の現金入り封筒事件を『他人事』と見なすのは困難だろう」と述べた。
朴相ギ(パク・サンギ)記者