【5月8日付社説】福島処理水、科学優先だが国民感情にも配慮を

 韓日首脳は福島原発の汚染処理水放出問題に関連し、国際原子力機関(IAEA)による検証とは別に、韓国の専門家グループの現場視察に合意した。IAEAは既に2021年7月、韓国を含む11カ国の専門家でモニタリングタスクフォースを設置し、汚染水処理過程を検証している。また、昨年3回にわたり、IAEAによる立ち会いの下で採取した汚染処理水と魚、海藻類、海底堆積物などのサンプルを韓国、米国、フランス、スイスで分析してきた。それにもかかわらず、日本政府が韓国の専門家グループが別途現場で検証を行うことに同意したのは、3月の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による訪日以降、韓日関係が改善したことで、日本側が誠意を示したためとみられる。

【写真】岸田首相来韓で同時に行われた歓迎集会と糾弾集会

 福島原発の汚染処理水が韓国の海に悪影響を及ぼすかどうかという問題は、科学的には争点になりにくい事案だ。放流水は太平洋を時計回りに大きく一周し、4-5年後に韓国海域に到着する。その間、巨大な太平洋で希釈され、韓半島付近に到着する際には懸念されるトリチウムが数値的に意味をなさない濃度になる。さらに、韓国の原発団地4カ所が毎年海に放出するトリチウムは福島原発が放出予定のトリチウムの量の10倍ほどになる。さらに中国沿岸部の原発からの海洋放出量も福島原発からの放出予定量の10倍程度だという。そうした点を無視し、福島の海洋放出に文句を言うのもつじつまが合わない。

 それでも韓国政府は福島の汚染処理水放出問題だけは極めて慎重な姿勢で扱わなければならない。放射能はどこの国民でも恐怖の対象だ。国民の体感リスクは、実際のリスクとは全く異なることがある。特に政府当局者のささいな一言、数文字の発言が国民の感情を刺激することがある。日本と関連した問題であればなおさらだ。2008年の狂牛病(BSE、牛海綿状脳症)騒動の際、「米国で狂牛病の牛が新たに発見されても直ちに輸入を中断することはできない」という条項が国民の健康を見下す検疫主権の放棄と認識され、市民の怒りが膨らんだ。福島の汚染処理水問題はあくまでも科学的事実に基づき、冷静に処理する一方、政府当局者は薄氷を踏んで立っている気持ちで発言や行動に慎重であるべきだ。

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  • ▲岸田首相訪韓を翌日に控えた6日、ソウルの日本大使館前で環境団体が福島原発の汚染処理水の海洋放出に反対するパフォーマンスを行った。/聯合ニュース

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