【コラム】中国はなぜ韓国をないがしろにするのか

「小国があえて大国に対し…」、傍若無人な中国に抗議できず

現代版事大主義の克服なきまま、粗末に扱われ、さげすまれ続ける

【コラム】中国はなぜ韓国をないがしろにするのか

 中国外交部(省に相当。以下同じ)には報道官が3人いる。先任者は局長の華春瑩(53)で、その下に副局長が2人いる。そのうちの一人が先日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の台湾関連の発言を巡って「口出しは受け入れられない(不容置喙〈かい〉)」と発言した汪文斌(52)だ、副局長といえば韓国では3級もしくは2級公務員に相当する。外交慣例上、他国の首脳をとがめる立場にはない。

 不容置喙は、清代の作家・蒲松齡(1640-1715)が書いた怪談集『聊斎(りょうさい)志異』に収録された「三生」という短編に出て来る成語だ。「口出しを許さず、即座に斬首した」(不容置喙、立斬之)という文章から出てきたもの。喙とは鳥のくちばしのこと。「口出しするな」という単純警告ではなく、「首が飛び」たくなければ口をつぐめ、という脅迫に近い。遠回し、かつ融和的な修辞で上品に振る舞う外交においては、使うことのできない荒っぽい表現だ。

 今年2月に朴振(パク・チン)外相がCNNテレビのインタビューで台湾関連の発言をしたときも、中国外交部の毛寧(51)報道官は「不容置喙」に言及した。人民解放軍の強硬派が使いそうな非外交的言辞が、外交部のブリーフィングで、今年だけでも2回出てきた。いずれも韓国に向けたものだった。西側諸国の多くは台湾問題を取り上げるし、しかも韓国よりひんぱんに言及している。そのたびに中国は腹を立てるが、「不容置喙」とは言わない。韓国だけが甘く見られているのだ。

 「不公正判定」問題で騒がしかった北京冬季オリンピック当時、駐韓中国大使館は「一部の韓国メディアと政治家が反中感情を扇動している」との見解を出した。主要国メディアの大部分が不公正判定論争を取り上げたのに、韓国だけを目の敵にした。シン海明大使は、大統領候補時代の尹大統領のTHAAD(高高度防衛ミサイル)関連の発言に文句を付け、韓国メディアに反論文を出した。外国の大使が、外交チャンネルを脇へのけて駐在国の選挙に介入した、唯一無二の事例だろう。

 中国の傍若無人は、「小国は大国に追随すべき」という時代錯誤的中華主義に起因する。韓国を同等の主権国とは見ていないから、外交ではなく訓戒を行い、内政に干渉する。中国がTHAAD報復措置を浴びせ、官製の嫌韓デモが膨れ上がったとき、これを擁護・助長していた中国国営メディアの論理が「小国が大国の利益を侵害している」だった。

 韓国の指導層は、中国の冷たい扱いや横暴に順応してきた。自ら小国として振る舞い、中国におもねった。前ソウル市長は韓国をハエ、中国を馬になぞらえて「ハエは馬の尻にぴたりと付いて万里を走る」と言った。前政権の駐中大使は、習近平に信任状を提出する際、芳名録に「万折必東」と書いた。朝鮮王朝時代の事大主義者らが明の皇帝に向けて忠節を誓いつつ書いていた言葉だ。「中国は高い山の峰、韓国は小さな国」だと言う大統領まで出現した。

 中国を怖がる「恐中症」は、韓国外交の宿痾(しゅくあ)だ。これが、前政権を経る中で悪性のものになった。「THAAD3不」に反対した官僚は左遷され、中国の気分を重視する一群が出世した。親中エリート集団は今も健在だ。数カ月前、国連で自由民主陣営50カ国が中国のウイグル人権弾圧を糾弾した際、韓国だけが足抜けする-というとんでもない事件が起きたのは偶然ではない。

 汪文斌の暴言が出たその日、韓国外交部は「国の格を疑わせる深刻な外交的非礼」だとして久々に抗議した。当時の事情に詳しい消息筋によると「国家安保室から完全にひっくり返された末の立場」だという。もともと韓国外交部は「『一つの中国』原則を尊重する」という類いの婉曲(えんきょく)な内容を準備していたという。しかもその日、韓国外交部はシン海明大使を招致した事実も、しばらく後になってから公表した。日本の外交官を招致するたび、メディアにあらかじめ知らせてフラッシュの洗礼を浴びせるのとは、次元の異なる待遇だった。好意が続けば、相手はそれを権利だと思い込む。現代版事大主義を克服できなければ、不容置喙よりもっとひどい侮辱を受けてもおかしくはない。

李竜洙(イ・ヨンス)論説委員

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