キッシンジャー氏「米中対立、5~10年で第3次世界大戦につながる可能性も」

キッシンジャー氏「米中対立、5~10年で第3次世界大戦につながる可能性も」

 外交分野で米国を代表する権威者の一人であるヘンリー・キッシンジャー元米国務省長官(99)が「米中対立で今後5-10年以内に第3次世界大戦が発生する可能性がある」と警告した。

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 キッシンジャー氏は英国の週刊誌エコノミストと先日行ったインタビューで「双方のいずれも相手が戦略的リスクと確信している。われわれは強国の対峙(たいじ)に向かっている」と述べ、戦争回避に向け米中双方に「共存に向けた実用的なアプローチ」を求めた。

 キッシンジャー氏は1923年にドイツ・バイエルン州ミッテルフランケンのユダヤ人家庭で生まれた。ナチスの迫害から逃れるため家族と共に1938年に米国に移住した。1957年に「核兵器と外交政策」という論文でアイゼンハワー政権による核兵器中心の報復戦略の限界を指摘し、米国はもちろん旧ソ連の軍部にもその名が知られるようになった。

 ハーバード大学政治学科を卒業し、後に同大学で政治学博士となった。「勢力バランス」と呼ばれる現実主義の外交を訴え、1969年にニクソン政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官となった。同年から始まった米ソによる戦略兵器削減交渉、1972年のニクソン大統領と中国の毛沢東主席による首脳会談、ベトナム戦争終結に向けた1973年のパリ和平協定などに関与し、冷戦終結に貢献したと評価されている。

 キッシンジャー氏はインタビューで「われわれは古典的な第1次世界大戦直前の状況にある」「双方共に政治的な譲歩を行う余地は大きくなく、平和を破壊するいかなる行動も災害的な結果をもたらしかねない」との見方を示した。さらに「急速に発展する人工知能(AI)」などを理由に「第3次世界大戦を阻止する期限はわずか5-10年」と主張している。

 喫緊の課題としては台湾関連の対立緩和を上げた。キッシンジャー氏は「(台湾で)ウクライナと同じような戦争が起これば、台湾は破壊され世界経済は衝撃を受け、中国国内でも後退が起こるだろう」と中国などに警告した。さらに「米国は兵力の配備を慎重に行い、台湾独立を支援しているという疑いを持たれないようにすべきだ」とも指摘した。キッシンジャー氏は「米中両国が台湾に関する立場を維持し、まずは興奮を抑えて対話による実務的な関係と信頼を徐々に積み上げるべきだ」と助言した。

 キッシンジャー氏が提示する解決策は現実主義に基づく共存だ。キッシンジャー氏は「中国と米国の双方に全面的な脅威のない共存は可能だろうか? 私は今もそう考えている」との見方を示す一方「失敗する可能性もある。そのためわれわれは失敗に耐えられるよう軍事的に強くならねばならない」とも付け加えた。

 米国国内では「中国が敗北すれば民主主義と平和に転じる」との見方もあるが、キッシンジャー氏は「そんな前例はなく、共産主義政権が崩壊すれば内戦につながる可能性が高い」と警告した。

イ・ヨンソン記者

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